君色グラフィティ
□やさしい気持ちで
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同僚達がバタバタと風邪で倒れ、有り得ないほど忙しかった二週間。
昨夜は、久々に休めると気が抜けたのか、飲んでもいないのに、職場を出てから今までの記憶がない。
「…ん」
ベッドの中で、身動ぎしようとしたら、きゅっと抱き寄せられた。それは、親鳥が卵を抱くような優しさで、思わず、ほっと息を吐く。
柔らかい繭から抜け出すように、そっと体を起こして、可愛い寝顔に感謝のキスを。
「想、ありがと」
昨夜の自分はどんな有様だったのだろう。一晩中、抱きしめていてくれたとは、かなり心配させてしまったようだ。
もう一度、キスしようかと思っていたら、想の瞼がピクリと動いた。
「……なるみ…?」
「おはよう」
トロンとした表情が、にこ、と笑顔に変わり、起き上がっていた俺の頬に手を伸ばす。
「…眠れた?」
しばらく、緊張感から眠りが浅かった。なるべく、そういう素振りは見せないようにしてたのに、気付かれていたらしい。
「ん。ありがと」
「もっと、ゆっくりしようよ」
俺が立ち上がろうとするのを引き止めて、想は横になったまま、のんびりと欠伸をした。
「…想も休み?」
「ふふ、今日は日曜日だよ」
「あ…、そうか…」
どうやら曜日の感覚すら無くなっていたらしい。
急に疲れが押し寄せてきて、ベッドの空いたスペースに、グタッと身を投げた。
「お疲れさま」
想が、優しく微笑みながら、頭を撫でてくれる。
「ほんっと、疲れた…」
「鳴海、おいでよ。ぎゅーってしたげる」
服を引っ張られて、想の厚意に甘えることにした。
暖かさに包まれて、過ぎたはずの眠気が戻ってくる。
「…やばい…眠くなってきた…」
「寝ていいよ」
眠りへ誘うように、想の手が背中を撫でて心地良い。
「…想…このままいてくれるか…?」
「うん、いいよ。…頑張ったお利口さんに、ご褒美ね」
「…さんきゅ……」
よしよし、と頭を撫でられながら、穏やかに、深く息をした。
<END>
想くんが帰ったとき、鳴海くんは着替えだけしてバタンキューだったんじゃないかと。
最近、自分が想くんをどう扱いたいのか分かりません(^-^;