君色グラフィティ
□夏空
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「あっつい…」
練習試合終わりの帰り道、想は汗を拭いながら、心底だるそうに呟いた。
「言うなよ。余計暑くなる…」
いつも練習が終わる頃には、辺りが真っ暗だから、あまり感じたことは無かったが、学校から寮までの道には日陰が少ない。
「そうだけどさぁ…」
「あー、コンビニ行こうぜ」
ダメだ。少し涼まないと寮に帰るまでに調子悪くなりそう。
「うん。なんか飲みたい」
先に会計を済ませた想は、飲食スペースで買ったばかりのスポーツドリンクに口を付けている。
「想ー。一口くれ」
「いいけど…誠吾、自分のは?」
ペットボトルを差し出しながら、想はオレがテーブルに置いた袋の中を覗く。
「オレ、飲み物買ってねぇもん。ほれ、アイス。オマエも食え」
スポーツドリンクを、一口のどに流し込んだら、二つ買ったアイス最中のうちの一つを、想の方に出した。
今日はマネージャーの代わりに、ずいぶん働いてもらったからな。
「わーい!いいの?」
アイスを受け取りながら、目を丸くして想は言う。
「おう、奢りだ」
「ありがとー。…珍しいね、明日は雨かなぁ?」
洗濯しなきゃなんだけど、とか、若干困ったように想が笑うもんだから、思わずその手からアイスを取り上げる。
「コラコラコラ。…あ!鳴海ー、想がアイスいらねぇっつーんだけど食わねぇ?」
そして、ちょうどよくコンビニに入ってきた鳴海を見つけて、声をかけた。
「マジで?食う食う」
「あー、ちょっと待ってよ〜!」
想が手を伸ばしてくるより先に、アイスを鳴海にパスして、オレは勝ち誇った笑みを浮かべる。
「オマエはダメ」
「誠吾のケチ」
まるで子供みたいなやり取りに呆れたのか、鳴海はオレ達と同じ席に座ると、アイスを二つに割った。
「ほら想、半分こしよう」
「いいの?鳴海、ありがと♪」
「いいだろ?坪井」
「しょうがねぇなぁ。想、鳴海にちゃんとお礼しろよ」
「誠吾に言われなくたって、お礼ぐらい言えるよ」
「ちげーよ、たまには体で返してやれってこと」
「???」
「わかんねぇならいいや」
想の隣で、鳴海が苦笑いを浮かべてる。
付き合いだしたは良いけど、こいつらの仲が進展するのは、当分先になりそうだ。
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