君色グラフィティ


□スキ。
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(…今頃、なにしてるんだろ)

一人で夕飯を食べながら、想は、ぐるりと視線を壁へ巡らせる。
壁の向こうは、鳴海の部屋。
入試が近くなってから、勉強の邪魔をしないようにと、部屋に遊びに行ってない。

(…今日は追い込みかな。あんまり無理しないといいけど…)

(ちゃんと夕飯食べたかな…)

(あ…!鳴海の好きなドラマの時間!見てないだろうな…。録画しとこう)

何をしてても、鳴海の事ばかり考えてる事に気付いて、好きなんだ。と改めて実感する。

「逢いたいな…」

入試が終わるまでは、絶対に本人には言わないけど、一人の時くらい、声に出してもいいでしょ?
でないと、逢いたいって気持ちで、窒息しそうだよ。

明日は入試本番。
鳴海の部屋側の壁に触れて、鳴海の努力が実ることを祈る。

(きっと大丈夫…)

試験を受けるのは自分じゃないのに、緊張してしょうがない。
もう、どうしようもないな。と呆れた瞬間、携帯の着信音が、部屋の静寂を打ち破った。


【着信:鳴海 真幸】


「もしもしっ?」
『まだ起きてた?』

疑問形ではあるが、想が起きていることを確信していたかのように、鳴海は言った。

「うん。どうしたの?」
『ちょっと、声が聞きたくなった』
「え、と…」

そんなこと言われても、何を話したら良いのか、想は困惑する。

『試験が終わったら、何したい?なんでも言ってくれよ』
「そんな我儘…」

入試が終わって、鳴海が傍にいてくれるなら、想には他に思い付くことがない。むしろ、我儘を言って貰いたいくらいなのに。

『気ぃ遣うなよ。今まで我慢してきたこと、俺にさせたいこと、あるだろ?なんでも言え』
「…じゃあ……泊まりに来て」

そして、いっぱい撫でて。ぎゅっとして

『それから?』
「…ご飯一緒に食べたい」
『そうだな。他には?』
「…一緒に寝てもいい?」
『もちろん。そのつもりだよ』
「鳴海も、我儘言っていいよ」

僕だけ我儘言ったら不公平でしょ?

『そうだな…、想の作った飯が食いたい。それから、想を抱いて寝たい』

そんなことでいいの?
…でも、それば僕も同じかも。

「いいよ。久しぶりだね、こういう話するの。ごめんね、僕の方が元気貰っちゃった」
『いや、いいんだ。ご褒美ができたから、明日、頑張れそうだ』
「良かった」
『じゃあ、おやすみ』
「おやすみなさい」

いつもなら、別れ際はすごく寂しいのに、今日はなんだか心があったかい。

早く、明日にならないかな。


<END>

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