Junk

□Cafe Time-pear tart-
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カランカラン、とドアベルが心地好い音を立てたので、洗い物の手を休めて、レジに立つ。

「ねぇ、バイト君」

話し掛けてきたのは、カフェの常連客で、高校の先輩でもあるタカ先輩。

「篠宮です。いい加減覚えてくださいよー」
「はいはい、シノミヤ君。ね、この前ハルが食べてたの、どのケーキ?」

何度言っても、この先輩は、ハル先輩以外の人間に興味が無いらしい。
ちなみにハル先輩も同じ学校で、僕より2学年、タカ先輩からは1学年上の先輩だ。

「ハル先輩が?えーと…このタルトだと思いますけど」

そんなこと聞かれても、ハル先輩が来たのって1ヶ月くらい前なんだけど…。記憶を辿りながら、ショーケースを指差す。

「じゃあ、それ二つ」
「お持ち帰りですか?」
「いや、待ち合わせ。今日、ハルの誕生日だから」
「それなら、後でお出ししましょうか?」
「あぁ、よろしく。あと、いつもの」
「はい。先輩達は本当に仲良しですね」

アイスコーヒーを入れながら、何気なく言うと、タカ先輩は少し真面目な顔をした。

「まぁね。ハルは俺の太陽だから」
「太陽…ですか?」

たしかに、ハル先輩は明るくて元気な先輩だけど。
思わず聞き返すと、先輩が何とも言えない大人っぽい笑みで僕を見返す。

「いつか、バイト君にもわかるよ」
「…はぁ」

先輩は、時々難しいことを言う。
会計をして席につく先輩の、言葉の意味を考えていたら、再びドアベルが鳴った。

「よ、篠宮。今日もバイトか。お疲れさん」
「あ、ハル先輩。タカ先輩がお待ちですよ」
「え、あいつ早いな〜。じゃ、カフェオレ」

言うと同時に、先輩が500円玉をレジに差し出したので、先に会計を済ませて、タカ先輩のいる席の方へ案内する。

「あとでお持ちしますから、席にどうぞ」
「ん。サンキュな」

ハル先輩が席に着くのを見送って、タルトとカフェオレをトレーに用意していたら、さっきの僕らの会話を聞いていた店長が、オマケのチョコプレートをタルトに乗っけてくれた。
トレーを持った僕がキッチンから出ると、それに気づいたタカ先輩が、ハル先輩に悟られないように、小さく笑いかける。

タカ先輩からのサプライズ、ハル先輩は喜んでくれるかな?

ワクワクしながら、僕は二人が座っている席にの横に立った。


<END>

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