hide and seek

□カナリア※
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どのくらい、時間が経ったのだろうか。気が付けば、階下で響いていた宴会の音は止み、外の風雨の音しかしなくなった。

「そろそろ寝るか…遅くまで付き合わせて悪かったな」

篠宮は笑顔で首を横に振り、立ち上がって、奥の間に続く襖を開ける。

「……」

欠伸混じりに部屋へ入った鳴海は、自分の部屋の寝床に入るような気軽さで、布団を捲った。

「篠宮?なに、ぼーっとしてるんだ?」

ふと、鳴海は部屋の入口に立ったままの篠宮を振り返り、ギュッと握りしめられた手を引く。
崩れるように寄り掛かってきた体は、緊張して小さく震えていた。

「どうした?…あぁ、もしかして、雷が怖いとか、そんなクチか?」

話をしている時は、お互いに相手の動作に集中して気にならなかったが、外では獣が唸るような低い音が響いている。

「大丈夫だよ」
「っ!!」

震える篠宮を抱きしめて、鳴海は笑いながら布団に倒れ込む。胸の上に乗った篠宮が、驚いて起き上がろうとするのを、片手で押さえて、その上から布団を被った。

「ほら、これでだいぶ聞こえなくなった」
「……」

暗いので鳴海はわからなかったが、篠宮は顔を真っ赤にしてうろたえていた。
布団の中で、抱かれる以外のことを篠宮は知らない。雷など怖くはないが、このような扱いを受けたことがないので、先の読めない状況は怖かった。
まるで幼子にするように、穏やかに髪を撫でられて、その手に縋りたい気持ちと、それを止める気持ちが、胸の中でぶつかり合い、混ざり合い、涙となって溢れ出す。

「っっ…」
「えっ…?」

今度は鳴海が驚いて、布団を退かし、篠宮を覗き込んだ。
篠宮は、ボロボロと零れる涙を見られないように、腕で必死に顔を隠す。

「ちょ、ちょっ…待て!俺、なんかしたか…!?」
「ッ」
「…な…」

鳴海が、逃げようとする篠宮の腕を掴んだ際、間違って篠宮の着物が大きく開けてしまい、白い肌が、そこに浮かぶ痛々しい痣が、鳴海の前に顕わになった。

「…っ!!」

篠宮は慌てて着物の前を合わせると、力の抜けた鳴海の腕から、転がるように逃げ出して、鳴海に背を向け、狭い殻に閉じこもるように小さく蹲る。

「篠宮…」

鳴海が篠宮を自分の方に向かせようとしても、篠宮は頑として動かない。鳴海はため息を吐いて、自分の荷物を漁った。
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