駄文。
□ふわり。
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「…ったく…こっちは他の事件で忙しいってのにテメェから予告状が届く度中森警部に呼び出しくらうわクソさみぃ中待ち伏せするわで散々な目にあってきたってのに」
何も言わず、オレを凝視するキッドに、言葉を続ける。
「とりあえず、こんだけこのままじゃあオレの気がすまねぇ…今まで散々人のこと振り回しておいて簡単にさよならすんじゃねぇよ」
鋭い瞳でキッドを睨みつける。
「とりあえず何が言いたいかっつーとだな………」
コイツにぶちまけてやりたいことなんて山ほどあるが。
最後に、一番伝えたいことは、
「またな、キッド」
その言葉に、意表をつかれたように目を丸くするキッド。
ニヤリと、挑戦的な笑みを浮かべてキッドを見つめれば、
しばらく呆気にとられたままだったキッドも、同じ様に口元に挑戦的な笑みを浮かべ、オレを見つめた。
「そうだな…。またな、名探偵」
相変わらずの気障な口調でそう告げた後、
ふわり。
屋上から静かに飛び立った------。
夜の闇に吸い込まれるように徐々に遠くなってゆくハンググライダー。
もう、会うことなんてないかもしれない。
わかっていたけど、どうしても伝えたかった。
静かに上空を見上げながら、その場に佇んでいた---。
◇◆◇
あれから一年。
キッドは、今頃どうしているのだろう。
無事に、生きているのだろうか。
季節は春を迎え、桜の花びらが辺り一面に舞っている中、ぼんやりと桜の木を見つめながら、そんなことを考えていた。
そのとき-----。
ふわり。
オレの肩に何かが触れた。
視線を向ければ、肩に止まっていたものは、
「ハト……?」
白い、小さなコバト。
「おーい」
遠くから聞こえてくる足音と誰かの呼ぶ声に振り返れば、フワフワの癖っ毛をした少年の姿が、そこにはあった。