特 小説 別

□DUAL-CROSS 『She (Was) Teared』
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朝の爽やかな時間帯、少女は携帯電話を片手に走っていた

「雪さん!雪さん!ニュースみました!?っと、その前に…えーっと…今、文房具屋さんの前です」

ボーイッシュな格好をした短いツインテールの少女が携帯に向かって叫んでいる
電話の相手はだるそうに返事を返す

『少しトーンさげろ…音割れして何を言っているのかさっぱりだ、あと一々報告しなくていい』

「報告しないとなんか気持ち悪いんですよ〜。それより見ました?ニュース、ニュース!」

『ああ、連続通り魔事件の4人目の被害者の遺体が発見されたんだってな』

「そうそうそう、鋭利な刃物でめった切りにされた男性の遺体が!えーっと…今、果物屋さんの前です」

『なら、もうすぐ着くか』

「今、入り口の前です」

『早いな…鍵は開いてるから入れ』

少女は路地裏にある看板の出ていない喫茶店の扉を開いて中に入っていった
そして、店内奥の部屋へと向かっていく

両側が本棚に埋めつくされたその部屋の奥で
何かの書類を脇に抱えた男が1人、扉に背を向けて受話器を耳に当てていた

「今、雪さんの後ろにいます」

「電話越しに伝えなくていい」

雪さんと呼ばれた人物は電話を切ると少女に振り返り、ホチキスで留めてある書類を投げ渡した

「真夜、久々にお前にも手伝ってもらう仕事だ」

「えー!仕事ですかー?もぅ、デートだと思っておしゃれしてきたのにー」

少女、真夜は頬を軽く膨らます

「お前のおしゃれは男装なのか?冗談はそれくらいに働け従業員」

「にゅ〜冗談だとなぜばれたし、わかりましたよー経営者―」

真夜はぶつくさ言いながらも書類に目を通した

「うわ…今回、これが仕事なんですか?」

「なんだ、不服か?電話で楽しそうに話していたじゃないか」

「いやそういうことじゃなくて!完全に警察の仕事ですよねコレ」

真夜は書類を軽く振りながら抗議する

「一応、ここは何でも屋みたいな物だからな。諦めろ、ちなみに依頼人は渡部だ」

「やっぱり、こういう仕事は絶対に渡部が持ってくるんだよ〜。………よし!あとでイタ電入れてやる!」

「真夜、仕事が終わってからな」

雪さんと呼ばれた男はだるそうに真夜を睨みながら言葉を吐き出す
渡部という人物の弁護に回る気は到底無いようだ

「…は〜い」

返事をした後、机に突っ伏すと真夜は『通り魔事件に関する詳細事項』と表紙に書かれた書類の続きに目を通し始めたのであった
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