東 小説 方

□プロローグ
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「まずいな……はは………」

ただただ、立ち尽くす俺
周りを鬱蒼と繁る木々に囲まれた、山だか森だか判らないが…とにかく俺が住んでいる街では無い場所にいる…

「ここは………………………………………どこだぁああああああ!!」

まじやべぇ!あり得ねぇって!!どういうこと?てかあれ?俺、迷子?この歳で!?やっば!パニクってきた!
落ち着けーっ、いったん落ち着けーっ!そもそも、こんな奇跡体験アンビリヴァボー的な体験をして俺、大丈夫?記憶とか失ってない?ほら、よくあるパターン?
名前、名前!名前、覚えてるか自分の!
えーと……桐山 梓
うん…覚えてた
普通に思い出せた、てか思い出す以前の問題だった……
てか、記憶を名前以外に失ってる方がよくあるパターンじゃね?過去をちょっとプレイバァック!

………………………………

あれ…なんでだろう、涙がとまらないや
くそぅ!俺の脳はどうなってんだ!
なんでピンポイントにトラウマ染みた事を思い出してんだよ!もっとお手軽な記憶あんだろ!昨日の夕飯になんたら食った〜みたいなそんなんをよぉおおお!
そういや昨日何を食べたっけ?
もしかするとこの奇跡体験する原因となるようなもん食べたかも…

…………………………………………

あれ…なんでだろう、また涙がとまらないや
そういや昨日何も食べて無かったんだった…

…涙を代償に記憶を失っていないことは分かった
地道に記憶辿って原因探してみた

遡ること、およそ……の見当もつかない…
俺は自分が時計を持たない主義であることを2、3秒悔やんだ

このアンビリ体験は雨が降り頻る中で起こった
▽△▽△▽


高校を昼前に自主早退した俺は突然降りだした雨にテンション駄々下がりだった

雨は基本的に大嫌いだ

降るなら俺が屋内に居るとき限定にしろ!
と悪態を吐きながら家路を急いだ


ただの通り雨だと思っていたが予想異常にしぶとい雨でその勢いは弱まるどころか激しさを増し、前方の確認がほとんどとれなくなるほどの化物となった
最早、目を開ける事は叶わなかった

負けるかぁああああ!!!

と叫びながら俺は今までに無いほど全力で駆け抜けた

嵐の中を走り抜ける事も十分に奇跡体験と言るだろうが、本当の奇跡体験はまだ続いていた

先程まであんなに大荒れに荒れていた嵐がピタリと止んだのだ
違和感しか覚えない状況で俺が目を開けると

なんということでしょー
ビルが乱立していたコンクリートジャングルは本来の姿を取り戻しマジジャングルへと劇的な変化を遂げました〜

劇的にも程があんだろうがぁあああああ
▽△▽△▽


かくして俺はいろんな意味で道に迷ってしまった
見たことの無いような奇怪な植物が平然と植生しているところを見ると別世界に来てしまったのかもしれない

更に困ったことに

俺はこんな絶体絶命な境遇にも関わらず、異様な高揚感に満たされ
元の世界に戻る気は微塵も起きず
起こす気も無かった

俺は喜んでいた………?
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