頂き物

□外伝…
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天蓬−−−−−










気がつけばいつも一緒にいた


無茶をする気質だから、目が離せなかった


子供の様な笑顔も


高所恐怖症と言いながら桜の木に登る所も


クールなふりをして、誰かの為に自分の血を流す事も厭わない所も


全てが愛おしかった


だから、君が死を覚悟した時、僕も同じように死を選んだ


生きる事を諦めていたわけじゃない


願わくば、何の柵もない下界で


ただ、隣で笑っていたかった





“またあとで”


その言葉が、僕には


“さようなら”


としか聞こえなかったんだ





最後に見せた笑顔が、僕の胸に刃となって突き刺さった


“これが最後”


そうなってしまっては、死に躊躇いなどなかった


そして、彼と同じように言葉を紡ぐ


「また…あとで」





後に残された者の苦しみなんて知りたくなかった


そんな苦しみは味わいたくなかった


全ては自分のエゴだ





幾程の血を浴びても、肉体が深く切り刻まれても


構わない


痛いのは嫌いだけど


彼を失う疵に比べれば、何ともない


ただ、彼と同じように


誰かの為に死ねたら…





僕が、人とは言い難い身体になっても


“彼ら”の小さな希望の光は消えない





「捲簾…」


もう、消えてしまう灯と


懸命に光る希望


どうか、彼らに幸せを…















…やっぱり…痛いのは嫌だな…





目ももう見えない


死が、こんなにも遠いとは思わなかった


肉体も心臓もすでに機能していないのに


頭の中だけは、まだ止まらない





苦しい


苦しい


苦しい


苦しい



早く無に還してくれ










“ば〜か”


“余計な事、ごちゃごちゃ考えてるんじゃねぇよ”


とうとう狂ったか


捲簾の声が聞こえる





“俺たちは無になるんじゃねぇ。俺たちの命は何度も繰り還すんだ”





生も、死も、同じ…





“だから、怖くなんかねぇんだよ。今世でさようなら、来世でこんにちわ。だろ?”





あの捲簾らしい笑い声



そうか


そうだったんだ


僕らは何度も出逢い、別れを繰り返して


そしてまた、出逢う





また、出逢えるんだ





遠くで彼の声がする


呼んでる


あの声で


あの笑顔で





先刻までの苦しみが消えた


やっと、この命が完全に消える


そして、新しい命へと回帰する



次、生まれ変わっても、“愛してる”なんて言えないだろう


でも、僕たちは何度でも巡り会える


だから、素直に伝えられるまで、何度生まれ変わっても傍にいて欲しい










“今世でさようなら”


“来世でこんにちわ”
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