NOVEL

□花言葉
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花言葉

「これやる。」

手渡した物は野に咲いていたその瞳と同じ色の菫だ。
子供の頃は何も考えずに渡せたはずの代物だ。

何時からだろう?
何も考えないで渡せなくなったのは?
何時からだろう?
仲間から家族に、家族から大切な人になったのは?

体は大きくなって、昔は出来なかった事が簡単に出来るようになった。
けどよ、出来なくなった事もある。

自然にその白い手を繋げなくなった。
深い瞳の色を覗き込まないと見れなくなった。
近くにいたその香りと暖かさを感じられなくなった。

その花は俺の願い。
どうか守っててくれ、その花言葉を。
お前は俺がその花言葉を知ってるなんて分かっちゃいねぇだろうな。
分かられちゃ恥ずかしいから、そのままにしておいてくれ。

菫の花言葉は…
    貞節 
何時か迎えに行くから、待っててくれよ?






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