NOVEL

□ワンコ
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「まなかったな、井上。」

振り返った視線の先には犬なのか?と疑問を投げかけずにはいられないぬいぐるみらしき物が両手いっぱいに抱きしめられていた。

少し離れたベンチにすわった2人は女だけで話があるらしく、背を向けているので、話し声が聞き取り難い。

「いえいえ。お気に召しましたか?」


少し腰を曲げて覗き込むようにして井上がルキアの顔を見ていた。

「当然だ、井上に依頼して本当によかった。」

またきつくそれを抱きしめたルキアの顔はこちら側からは見えず、見えるのは小さな肩をさらに小さくしている後ろ姿と正面にいるこの男のふてくされた顔だった。

対照的な2人はなかなかあわない非番が
た・ま・た・ま
重なって、
た・ま・た・ま
俺たちの楽しい週末に乱入していた。

ハッキリ言わしてもらう、邪魔だ。もの凄く邪魔だ!

憂鬱な梅雨もあけ、学生なら避けては通れないテストが終わって最初の週末。

彼女がいる人間ならデートに誘ってなにが悪い。

そんなささやかな願いがこの2人によって潰された。

許されるなら、今すぐ白哉に電話してやりてぇぐらいだ。いや、しねぇけどさ。

でもあと10分邪魔されたら分かんねぇけどな…(黒笑)
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