PROSE U

□Night calm
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「ちょっとお邪魔してもよろしいですか?」
僕の真下で呼ぶ声がした
足元に雅に座る猫が1匹
 
何処か寂しげな彼は言った
「あなたと星を取りに行きたくて」
戸惑いは後ろに残されたまま
 
彼は僕の腕に触れた
「さぁ 行きましょうか」
暗闇に浮かぶ
鮮やかな服を纏う
黒猫と僕は空に溶け込んだ
 
銀の粒が絡まる
彼はその粒さえも味方につけた
 
僕は何だか鬱陶しくて
思わず銀色の糸を断ち切った
 
彼は吸い込まれていく
去り際に微かな呟き
 
「silver star...」
 
彼の言葉の意味することは
遮った僕に理解できるはずもなく
 
 
彼は見つけられたのだろうか
 
星をこの手に掴むという
幻想を儚く伝えた、
蒼い瞳を携えたまま
僕はふと彼が消えた夜空を仰いだ
 
彼が現れるようなそんな気がして
 
僕はもう見捨てられたのだろうか
 
彼と星を掴むことなど
やはりできるわけがない
 
きっと…
 
涙で霞む視界の中で
僕は1つ、はっきりと見える星に出会った
 
「こんばんは、やっと見つけてくれましたね」
 
ひらりと舞い降りた 銀色の猫
光が失われれば 暗闇の猫
 
僕に理解できたのは
彼の名が「銀色の星」だという事
僕は星を掴まえた

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