◆第4幕・Sugar。

□AQUA CODE。(仮タイトル)
2ページ/5ページ


『オフィス街の一角、まるごとデザイナーがプロデュース』
というのは、以前に聞いたことがあった。

"勤務してみたい環境"として、若いサラリーマンやOLには…大人気だとも。

でも、あくまで理想の上で。

実際問題、テナント料が高額な為、中々契約が−−というのが現実だという。

経営者が、なんとか少しでも工事費用や維持費を回収しようとして、ひと月前に増設・リニューアルしたのが−−

このオフィス街、兼ショッピングモール。


ショッピングモール、とは銘打っていても。

"オフィス街の中にあること"を意識し、その品揃えは−−やはり、ビジネスマン向けだった。


例えば、ブックストア。

かなりの敷地面積を誇るそれは−−大半がビジネス書だった。

コンピューター書籍。
各種資格取得用テキストに問題集。
語学に自己啓発本。
ヘルスケアに辞書や地図。
娯楽類は、ノベルズ系。
ファッション誌や漫画は新刊や青年誌系に−−定番もの。
週刊誌の類いは置いていない。

「本屋に行けば−−大体、その地域の人間が解るよな」
黒崎くんが苦笑する。


フロアガイドのリーフレットをめくってみる。


コンビニとドラッグストアが数軒点在。

カウンセリングカウンター付きの化粧品メーカーが数社。

革小物を扱うブランドメーカーに、ビジネス系スタイルのアパレルメーカー。

などなど。

ざっと目を通してみる。が。テナント名を見る限り…

「銀座一丁目とか、表参道LEVELの店舗を陳列縮小しました、ってカンジかな。コレは…」

学生や親子連れは−−足を運びにくいだろう。


だけど。
今こうして

昨日、突然にTVや雑誌で−−派手に紹介されてしまったから。

"穴場!
デートコースはオフィス街。"

"オフィスビルの中に映画館。
カフェも。
バーも。
レストランも。
夜景だって満喫できる!
全てが揃う、大人の空間!!"

確か――そんな感じに。


「あんなにさー、大々的に宣伝しちゃったら、もう”穴場”でもなんでもないじゃん…」

小島くんが溜息を漏らす。


確かに…繁華街・デパート街の中にある映画館、カフェは

「家族連れや、夜遊び組な学生が多いし…折角のデートで、酔っ払いに絡まれたりとか…ムードが壊れたらイヤ」

なんて声もある。


ここなら――確かに大人向けのデートが楽しめる。


だから。
――周りは…ビジネスマン以外は−−殆ど大人カップルで。


――私たちは…浮いていたかもしれなかった。






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ