◆第4幕・Sugar。
□AQUA CODE。(仮タイトル)
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『オフィス街の一角、まるごとデザイナーがプロデュース』
というのは、以前に聞いたことがあった。
"勤務してみたい環境"として、若いサラリーマンやOLには…大人気だとも。
でも、あくまで理想の上で。
実際問題、テナント料が高額な為、中々契約が−−というのが現実だという。
経営者が、なんとか少しでも工事費用や維持費を回収しようとして、ひと月前に増設・リニューアルしたのが−−
このオフィス街、兼ショッピングモール。
ショッピングモール、とは銘打っていても。
"オフィス街の中にあること"を意識し、その品揃えは−−やはり、ビジネスマン向けだった。
例えば、ブックストア。
かなりの敷地面積を誇るそれは−−大半がビジネス書だった。
コンピューター書籍。
各種資格取得用テキストに問題集。
語学に自己啓発本。
ヘルスケアに辞書や地図。
娯楽類は、ノベルズ系。
ファッション誌や漫画は新刊や青年誌系に−−定番もの。
週刊誌の類いは置いていない。
「本屋に行けば−−大体、その地域の人間が解るよな」
黒崎くんが苦笑する。
フロアガイドのリーフレットをめくってみる。
コンビニとドラッグストアが数軒点在。
カウンセリングカウンター付きの化粧品メーカーが数社。
革小物を扱うブランドメーカーに、ビジネス系スタイルのアパレルメーカー。
などなど。
ざっと目を通してみる。が。テナント名を見る限り…
「銀座一丁目とか、表参道LEVELの店舗を陳列縮小しました、ってカンジかな。コレは…」
学生や親子連れは−−足を運びにくいだろう。
だけど。
今こうして
昨日、突然にTVや雑誌で−−派手に紹介されてしまったから。
"穴場!
デートコースはオフィス街。"
"オフィスビルの中に映画館。
カフェも。
バーも。
レストランも。
夜景だって満喫できる!
全てが揃う、大人の空間!!"
確か――そんな感じに。
「あんなにさー、大々的に宣伝しちゃったら、もう”穴場”でもなんでもないじゃん…」
小島くんが溜息を漏らす。
確かに…繁華街・デパート街の中にある映画館、カフェは
「家族連れや、夜遊び組な学生が多いし…折角のデートで、酔っ払いに絡まれたりとか…ムードが壊れたらイヤ」
なんて声もある。
ここなら――確かに大人向けのデートが楽しめる。
だから。
――周りは…ビジネスマン以外は−−殆ど大人カップルで。
――私たちは…浮いていたかもしれなかった。