◆第4幕・Sugar。

□キミノマニア。
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がっ。

ばさばさばさっ…



――い…ってえ…っ…。


何だ!?
何が起こったんだ!?

後頭部の激痛で目が覚めた。


半覚醒の目に。
ぼんやりと…紅い頭が映る。

「…檜佐木主任――…」

A.オハヨーございます。
B.大丈夫ですか?

多分。
"声を掛けるに当たって、どちらを先に口にすべきか"
迷っているであろう、後輩。


口を開きかけて。
つぐむ。
――のが見えた。


「…大丈夫だ、阿散井」

あまり大丈夫では…ない気もする。


痛い。


頭を摩りながら。
床に目をやると。

紙見本と色見本の分厚いファイルが、無造作に投げ出されている。



――こいつか。

二段式の卓上ファイルラックに空きがある。

何かの拍子に滑り。
自分目掛けてダイブした――んだろう。


最悪な目覚めだ。


頭が切れてないかどうか気になり。
指先で傷は無いかと探りながら。ラックにファイルを戻すと。

察したのか。
「濡れタオル…持って来ますから!」
「や。別に…」

体育会系の上下関係に馴れきった後輩――阿散井は――聞く耳持たず、という風に。
給湯室に向かって…すっ飛んでいった。


引き止めようとして。
伸ばした右手のやり場に困る。

どうも。
イマイチ体育会系のノリに――着いていけないんだよな。


夜中。2時を回った頃に原稿の完成を確認した――と同時に。

意識途切れる→睡魔来襲→朝。

というパターン。
――いつものコトだけど。





入社して。
研修終わって。
直ぐさま配属された広報企画部。



そういや。
…初日から終電だったな。



入社面接で。
東仙マネージャーが、
「志望してくれて嬉しいのだけれど。ウチは忙しい部署なんだ」
体力…大丈夫かな…?

穏やかに微笑みながら言った言葉。


あれは脅しなんかじゃなかったんだなーと。
痛感したのは、配属されて十日ほど過ぎた頃で。

実際。
新人が5人――抜けている。

うち3人は他部署に異動。
1人は人事(何故だ?)。
そして1人は――…

「主任!これで取り敢えず!」
「あ…悪かったな…」
阿散井が濡れたおしぼりを手に戻ってきた。

…秘書課のだ。







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