◆第4幕・Sugar。
□AQUA CODE。(仮タイトル)
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見つけたのは、偶然。
でも。
きっと、必然。
−−だったら…いいな。
†AQUA CODE。
帰宅ラッシュだった−−。
エスカレーターにも。
エレベーターにも。
…乗れない状態。
それは。
オフィス街の中にあって。
家路へ急ぐ人。
残業の合間に、夜食の買い出しに行く人。
オープンテラスで商談−−らしきもの−−をしているのは、英語圏の人達。
カフェやベンチでは。
ノートパソコンのキーを忙しく叩きながら−−ケイタイで何やら指示出ししている背広群。
それに混ざって、会社や学校帰りに遊びにきたと思しき人。
人。人。人−−…
その予想以上の多さに。
私達は…立ち尽くしていた。
−−そんな木曜日の夕方。
いくつかのミニシアターは、まだ新しく、音響設備も最新式。
オフホワイトを基調とした矩形の組合わせの建物たち。
規則的に並べられた硝子張りの外壁。
オフィスビル群の隙間には、涼しげなグリーンの植樹。
艶消しスチールで統一された、手摺り・ラウンドフォルムのベンチ・スツール達。
それらを。
寒色系や仄白い間接照明がライトアップする。
無機質な配列達は。
光を受け。滲ませ。
緩く…拡散させる。
レストランやカフェも同様に。
ホワイトとメタリック類でコーディネートされている。
そんなハイセンスな外観。
私たち学生でも、後退りしない程度には−−リーズナブルな価格設定だった。
これらを夜景付きで、ご提供。
…デートコース候補に、挙がる訳だ。
−−なあんてね。
あはは。
…そんなデート、したことないんだけど、ね。
「−−やっぱり…混んできた」
穴場だったんだけどな…
と、小島君。
「仕方ないって。ギリギリ、昨日発売の雑誌で…あんな宣伝されちゃあ、さ−−」
TVでもやってたし、と浅野くんの言葉に、たつきちゃんも私もそうそう、と頷く。
「むしろ、週末じゃなくて−−良かったよな…」
その分、もっと混むだろ…と、黒崎くんが言う。
あからさまに肩を落としている小島くんを、皆で交互に慰めていた。
いつもは浅野くんが−−遊びの立案者で−−何かと皆に声を掛けてくれることが多い。
だから。
"計画"が反古になったり、アクシデントで、スケジュールが頓挫した時の淋しさ。
それは、彼が1番よく分かる故に−−小島くんに、かなり気を使っている。
「−−あの映画の続き、早く観たいんだよねー」
前回、あんなトコで終わるんだもん…
一昨日の昼休みに、たつきちゃんが呟いた一言から。
「ああ。試写会のレポート見る限り…割とよさ気だったな」
黒崎くんが雑誌を取り出す。
「でもさー…まだ、先週の土曜に、やっと上映スタートしたばっかだからな…」
浅野くんが−−黒崎くんの肩を抱いて−−横から覗き込むと、上映スケジュール欄を指でなぞった。
うーん…
「じゃあ…今は混みそうだね」
だよねー、とたつきちゃんが溜息をつく。
「もうちょい経ってから、皆で行こうぜ」
どの辺にしよっかー…と、浅野くんがケイタイで検索を始めると…
「それなら、明後日行かない?開校記念日だし−−」
平日なら、きっと空いてるよ?
小島くんが目を輝かせながら、財布から紙の束を取り出した。
「平日利用のみ、の優待チケット…いっぱい貰ってたんだ。知人のコがさ、たまたま勤めてるオフィス街でね−−」
ミニシアターが…何か、さ−−ちょっとイイ感じのショッピングモールん中にあって…
「どうかなあ…」
返事を尋ねながらも、小島くんは
行くよね!?行くよね!!
と、期待を込めた眼差しで皆を見渡し。
そんな私達は−−二つ返事で約束したのだった。