◆第4幕・Sugar。

□キミノマニア。
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1月下旬。


夜の空気は。
まだ。
とても澄んでいて。




肺に。
指先に。


目に。


酷く――しみて。





どの位。
こうして立っているのか。


かじかんだ指先が。
固い。

襟元から入る風は。
氷の針――の、よう、で。




「何…してんだろう」
――俺。

こんなこと。しても。
何がどうなる訳でも――ない。




冴えた月。
足元を蒼く染めるから。


尚。
一層のこと。
空虚に――思えるのに。





戻らないと。


早く。

早く。
戻らないと――…



締切が近いのに。

こんなこと。
…してる場合じゃないのに。





見上げた高層ビルの明かり。


あの。
どこか一つの中に。

まだ。
彼女が。

いるかも――しれなくて。



そう。
思ったら。

途端に。
目の端。が。引き攣れて。



月も。
高層ビルの明かりも。

滲んで。
――歪んで。



彼女の幾分醒めた瞳に。
――似た。

冴えた――月。




月。
が。

足元。
を。

蒼。
く。

染め。
る。

か。

ら。



その光に――縫い留められて。




動、け、なかっ、た――…










キミノマニア。






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