◆第3幕・虚圏編。
□虚夜宮の明けない夜明け・1
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09:55
今日は、『虚園』に来てから…「十刃」全員が集う、初めてのミーティングだ。
――所謂、「顔合わせ」。
何事も、最初が肝心だ。
ドアノブに手をかけ、音を立てずに滑らかに奥へと押す。
「――おはよう、諸く…」
…ん?
んんんん!?
いち。
に。
さん。
よん。
ご。
ろく。
……6人。
6人!?
…………。
――まあ、…何だ。
”隊長・副隊長クラスが虚退治に現世に向かっている為に、全員揃わない”
――なんてコト、ザラだったしなあ……
…………。
――待て。
『虚園』だぞ、ここは。
うちら、『護廷十三隊』じゃないだろ。
…指示出すの自分じゃんか!
しかも、任務なんか――まだ出してないぞ!?
「あ、はよーざいます」
「はーざーまーす…」
…うち2人は、堂々と朝食摂ってるし。
朝マックかよ。
ここで食うかよ。
イートインして来いよ。
「あ…っ!」
あー、もう!
ホットケーキのシロップ、飛ばしてるし…
「何だよ…どっから開けんだ?これって」
「あ、それは…そこにあるツマミで…」
「ん。これか…やっべ!」
ざらぁっ…
あ!ヨーグルトのシリアルまでぶちまけて…
「…朝のミーティング開始までに、時間がないのは分かった。
とにかく――慌てなくてもいいから…」
…頼むから落ち着け。
「ほら、取り敢えず拭いてくれないか?テーブル、まだ新品なんだから…」
あ、ダスターなんてものは置いてないな。この部屋。
内線は…”#”要るのか?
まだ、会議施設なんて使ったこと無かったからなあ…
――初連絡がコレか。
2回程コール音。
プツン。
ん?誰か出たな。
――と、思った瞬間。
…きゃあああああっ!!
ガチャガチャン…ッ!!
…ガッ…ガガ…ッガラガラガラガラッ!!
――な…っ!な、なんだ今の絶叫と破壊音は!?
昨日、やっっと備品、揃ったばかりなんだぞ!!
コーディネートに、一体どれだけ時間かけて悩んだと思ってんだ!
「たっ、大変失礼致しました!藍染様ぁv!」
…………。
貴様か。
「――ああ、私だ。藍染だ。君は…確か、『ロリ』…で合ってたかな?」
「あ、そんな…vまだ、藍染様と出会ったばかりなのに…
私なんかの名前を覚えて頂けるなんて…v」
無視。
「悪いが、非ッ常〜に!急いでいるんだよ。会議室まで、ダスター2枚頼むよ。…濡れたヤツをね…」
「はい…藍染さまぁv」
電話の向こうで――確か『メノリ』、とかいう女が
“ちょっとお!
――ここは、あーたーしーなーのー!!“
と叫んでる。
”きゃあっ!アンタ何すんのようっっ!!”
…耳痛い。
「じゃあ。失礼する」
がしゃんっ!
…どっちでもいい!
だから早く持ってきてくれ!!
振り返ると、何事もなかったかのように…
というか東仙は――慣れているんだろうな。
こういう場面に…。
「東仙た…じゃない、東仙…
ミーティング開始時間は…確か…10時からだ、と記憶しているのだが…」
「…その通りです」
PDA端末でスケジュール確認。
流石早い。秘書!
…どうやって見えてんだか知らないが…
心の目がどうとかこうとか…延々精神論語り出しそう――なので、その辺りは敢えて聞かないことにした。
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「それはそうと…君達…朝食べて来ないのかい?」
「りかんらいれす」
「…おぅわいく」
何ゆってんだか、わっかんねんだよ!
つか、口に物入れて喋るな!
一旦手ぇ位、止めろ。
そして
「――ねえ?
い・ち・ま・る・く・ん…」
お前もだ。
「…さっきから…一体、何を隠れて啜っているのかな?」
「イヤやなあ〜、隠れてなんて食べてないですわ」
…………。
…尚、悪いだろ。
少しは、ごまかすとか何とかしろよ。
「Soup●tockの岩塩のスープ、あっさりしてて…美味いんやもん。ボリュームもあるし」
いや。もう…朝はコレやねえ、じゃないだろ。
上司や部下の前で、そんな満足げに食うなよ。