凛の瞳 本文

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「それでは棒倒しを開始します。位置についてください!」


片手にピストルを高々と掲げた教員が、朝礼台の上から声を張り上げる。
その途端、入場寸前までの熱気は急に引き、Aチームの面々の顔は重々しくなっていった。
みんな目の前に立ちはだかるB,Cの大群を前にして圧倒されてしまったようだ。
ツナ君も棒の上では落ち着けないようで、私の手元にある棒は絶えずギシギシと揺れている。


「すげーな、数が違いすぎるぜ」
「野球バカが。今更怖気づいたか?」
「ハハ、そうじゃねぇよ。何かこう、燃えるっつーかさ」


それでも私が落ち着いていられたのは、隣りにいる二人が相変わらずでいたからだ。それが何よりの救いだったと思う。
平常心を取り戻した私はもう一度前に向き直る。すると、敵陣が何やら騒がしい。何かあったのだろうか?


「どうしたんだろう……」
「いきなり仲間割れか?」


その時だ。
どこからともなく一つの影が棒の上に躍り出たのだ。

人物が身に纏う学ランが奇妙に黒光りする。
それだけで遠目からでもハッキリと誰なのかわかってしまったのだから恐ろしい。
顔から一気に血の気が引くのを感じた。


「ん、どうしたメイ?」
「――あ!アイツは……」

「雲雀、さん……」


どうして二度と会いたくないと思うと二度も三度も会ってしまうのだろうか。
これは神でも仏でもなくリボーン君のせいだど、その時の私には確信があったんだけどね。


「か、帰りたい……」
「は!?何だテメー、さっきの意気込みはどうしたんだよ!」
「だってあの人ダメ!無理!死ぬ!」
「ハハハ、メイは雲雀が大の苦手なのなー」


私が真顔で「帰りたい」宣言をすると、獄寺君が呆れた顔で声をあげる。
山本君は苦笑いとかじゃなくて本当で呑気に笑っているが、最早私には笑みを返す余裕すらなかった。
雲雀さんが絡んだところで、さっきまでの平常心はどこかへ素っ飛んでしまった。

「逃げません」発言はどこへやら。頭の中には弱音しか出てこなくなった。


「どどどどどうしよう、帰ってもいいかな?いいかな?ねぇ!?」
「どんだけドモッてんだテメー!?それでも男か!」
「女だよ!素で間違えないで!」

「まーまー、二人とも落ち着けって」


そのままケンカになりそうだったが、それを見かねた山本君が穏やかな口調で私達の間に割って入った。
いつもツナ君達とするように両腕を広げて私達の肩を大雑把に抱く。ビックリして抵抗しそうになったけど、男装していることを思い出し、緊張しながらも違和感のないように平然を装った。獄寺君はめっちゃ抵抗してたけどね。



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