狼少年

□発見
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〜念願の対面〜



白い月光が窓から差しこむ部屋でジンはうっすらと意識をとり戻した。
寝ぼけ眼を無造作にこすった彼の目の前に現れたのは、自分を上からジッとのぞきこむ怪しい笑顔。


「……夢か?ベルに目がついてる」
「バーカ夢じゃねえよ。俺だって目くらいあるし」


のそっと起きあがったジンは頭をかきながら辺りを見渡す。そっか、ちょっと前にアキバから帰ってきてそのまま寝ちまったのか。
ボンヤリと頭を整理したジンは再びベルに向きなおる。もう彼の目は前髪にシャットアウトされていた。


「今何時?」
「夜中の7時。これからリング奪いに行くからお前も来いよ」
「俺は守護者じゃないんだけど」
「王子に口ごたえすんなしっ!ジンいねーとつまんねーもん」


もう一度寝転がろうとするジンの腕をつかんで無理やり起こすベル。その手にはいびつな形をした指輪がはめられていた。守護者になるにはこのハーフボンゴレリングをもう一つの片割れと合わせて正式なボンゴレリングにしなくてはならないらしい。
まったくワガママな奴だと憤慨しつつも、ジンはしぶしぶ起き上がると彼に引きずられるがままに部屋をあとにした。




「う゛おぉい!よくもだましてくれたなカス共!」


段になった地からこちらを見上げている少年たちに、スクアーロは睨みをきかせて声を荒げてた。
夜の静かな並盛町に彼の罵声がガンガン響き渡る。モスカに寄りかかってうつらうつらしていたジンは思わず耳をふさいだ。寝起きにこの声はさすがにきついらしい。


「雨のリングを持つのはどいつだぁ?」
「俺だ」


スクアーロの呼びかけに一人の少年が前に進みでる。この間判明したもう一人のボス候補・沢田綱吉の仲間、山本武だ。
彼が強張った表情でスクアーロを見上げると、スクアーロはニヤッと意地の悪い笑みを浮かべる。


「なんだてめぇか。3秒だ、3秒でおろ――」
「おいスクうるせーよ。お前の声が頭に響いて寝らんねぇだろ」
「う゛おぉおい!テメー途中で入ってくんじゃねぇ!」


せっかくの決め台詞を台無しにされたスクアーロ。だが激怒している彼の横で激怒させた張本人はそんな自覚もなくボーっとしている。


「大体なんでテメーいるんだあ!?眠いなら帰って寝てろ!」
「仕方ねぇだろベルに叩き起こされたんだよ」
「シシッ、スクアーローだっせぇ。やっぱジンつれてきて正解だな」


憤慨するスクアーロを見てベルは爆笑。ジンは大きな欠伸を一つして再びモスカに寄りかかった。
そんな敵のまぬけな様子を少年たちは唖然として眺めていた。

その後もザンザスが現れてコミカルな空気が一瞬にして凍りついたり、ザンザスがその場の全員を殺そうとしてみんなが冷汗をかいたりしてもジンは一向に目を覚まさなかった。


それからしばらくたった頃、彼が目を開けるとスクアーロが誰かに向かって叫んでいた。いつのまにかボスも出てきてる。
ボンヤリしている間にも事態は進行していき、今度はチェルベッロ機関という謎の女たちが出てきてリングを懸けた戦いがうんたらかんたらと説明をし始める。
そこでようやく自分が寝てしまっていたのだと気づいたジンはスクアーロの目線を追って顔をあげた、その時だった。


「――き、鬼太郎!?」


説明をしていたチェルベッロが言葉をつぐむ。沢田綱吉たちも、門外顧問も、ヴァリアーでさえも、誰もが一斉に彼の方を向いた。そして困惑した。


――キタロウ?


だがジンはそんなことおかまいなしだった。その目に映っているのは家光の隣りに立っている少年、バジルだけだったのだから。
スクアーロは完全に拍子抜けしていたが、すぐに我に返ってバジルの元へ寄ろうとする彼の首根っこをわしづかむ。そしてこれ以上にないくらいの大声でジンを叱りつけた。


「う゛おぉいバカ野郎!何騒いでんだぁ!」
「おいスク鬼太郎いないってアレ嘘だったんだな!うおおサインくれ鬼太郎ー!」
「はぁ!?」


キラキラと輝くジンの視線を目で追ったスクアーロ。その先にいたバジルと目が合い彼は大分戸惑った。一方バジルも激しい勘違いをしている敵の視線を受けてとても複雑な顔をしていた。
ジンの発言にベルは大爆笑。終いにはルッスーリアやレヴィまでほくそ笑みだすもんだから、たいへんぐだぐだな空気になってしまう。どうすることもできなくなったスクアーロはとうとうボスに頼らざる終えなくなった。


「う゛ぉいボス。これじゃあ俺たちダサすぎだぜぇ……」
「――モスカ」


ザンザスも内心スクアーロに同情していたのか、モスカにジンをどうにかするよう顎で合図した。モスカは機械音をたてて目の前のジンをつまみ、そのままシャキシャキと回れ右をする。どうやら強制送還のようだ。
いきなり地から足を離されたジンは驚いてジタバタする。


「離せモスカ、鬼太郎にサインもらわねぇと!」


必死にもがいて抵抗するも、モスカは微動だにせずに力強く歩き出した。そのまま屋敷を目指して一歩一歩進んでいく。
しばらく辺りにはモスカの歩く機械音とジンの「鬼太郎!」と叫ぶ声だけが響き渡っていた。ゆっくりと家路に着く彼らの後ろ姿を一同は黙って見送った。





***
やっと鬼太郎ネタつかえた!満足!

20100406

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