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あるところにベルフェゴールという、とてもワガママな王子がおりました。
王子はその性格が故に友達もいなく、いつも一人で遊んでいました。

ある日。王子がいつものように森の近くの池で遊んでいた時のことです。
遊びに夢中になりすぎて、ボスの大事な金の毬をついウッカリ池に落としてしまいました。


「ヤッベー」


見つかったらボスに殺される。うわ、俺知ーらないっと。
王子はすぐに毬を諦めてさっさと家に帰ろうと踵を返しました。
その時です。


「あのー、そこの堕王子さーん」


王子ははたと足を止めました。何やら自分を侮辱するような声がしたからです。
声のする方へ顔を向けると、森の方から怪しげなカエルのかぶり物をつけた男の子が近づいてきました。
目に映るや否や、王子はそれを敵とみなしました。


「誰が堕王子だって?テメー、見ない顔だな」
「ミーはカエルです。じゃあ(堕)王子さん、ミーが池に落ちた毬とってきてあげましょうか?」
「カッチーン」


王子は目の前のカエルに向けて持っていたナイフを投げつけました。
ナイフはカエルの頭に刺さり、カエルはイッテーと感情のない声を漏らしました。


「何するんですかー、せっかく助けてあげようと思ったのにー」
「おい、当たったなら死ねよ」
「アイタタタ……まあそんなことより、毬とってきてほしくないんですか?」
「そりゃあ、できることならな」
「そんじゃミーがとってきますからー、その代わりにミーの願い事を聞いてもらえませんか?」


カエルは生意気にも交換条件を叩きつけてきました。
いちいちムカつく奴だ、と王子は思いましたが毬をとってきてくれるというのなら話は別です。


「ししっ、いいぜ」


王子が快くOKすると、カエルはすぐさま池にボチャンと飛び込んだ――のではなく
どこからともなく小さな釣り竿を引っ張り出し、糸をポチャンと池に垂らしたのでした。


「何してんのお前?」
「釣りです」
「お前カエルだろ。泳いでとってこいよ」
「あ、そーゆー体育会系のノリとかミー無理なんでー」
「うわコイツウゼー」


カエルの悪ふざけにいい加減キレた王子はカエルの背中を思いっきり蹴り飛ばしました。
カエルは「ゲロッ」と声を出すと、大きな音を立てて池にまっさかさま。
そのまま沈んでしまったようで、しばらく浮かんではきませんでした。

しばらく待っていると、何やらカエルの落ちたところからブクブクと泡が噴いてきました。
王子が不思議に思って見つめていると、さっきのカエルが飛沫を上げ、勢いよく飛び出してきました。
でもどういうわけか、カエルはカエルのかぶり物をつけてはいませんでした。


「ハァ、ハァ、王子さん助かりましたー」
「は?何言ってんのお前」
「実はミーは隣りの国の王子でしてー、ルッスーリアとかいうオカマ魔女に呪いをかけられてたんですー」
「それでカエルのかぶり物かぶってたワケ?」
「はい。あんな趣味悪い物好きでかぶるワケないじゃないですか。呪いを解くには他の王子に蹴られなくてはならなかったんですー」
「へー、良かったじゃん。んで、約束の毬は?」
「はいはい、とってきましたよ……あれ?」


カエル、もとい隣りの国の王子は毬を高く掲げましたが、よく見るとそれは金じゃなくて銀の毬でした。
どうやらとってくる毬を間違えてしまったようです。


「あちゃー間違っちゃった」
「あちゃーじゃねえし。なにやらかしてんだよ」
「仕方ないんでー、7個集めて願い叶えてもらってくれません?」
「テメー何の話してんだよ。殺す」


隣りの国の王子は身の危険を感じ、一目散に逃げ出しました。

一方王子はというとすぐ城に帰り、兄貴分であるスクアーロに泣き寝入りをして新しい金の毬を用意してもらいました。
新しい毬はボスの大事な毬とソックリで、絶対にバレることはないだろうと安心していた二人でしたが、


「フェイクだ」


偽物ハーフボンゴレリングを見破っただけあって、ボスの目は節穴じゃありませんでした。
後日真相がバレて、スクアーロが八つ裂きにされたのは言うまでもありません。


「う゛おぉぉい!なんでお前は無傷なんだよ!!」
「ししっ、だって俺、王子だし」




おわり

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