御礼夢

□レインボー・コンチェルト
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それは雨上がり直後の空にいつの間にか存在していた。

学校からの帰り道、水たまりに足を突っ込まないように目線を落として歩いていた俺達三人は全く気づかなかった。彼女いなかったら多分それを知らぬまま帰路についていただろう。


「ねぇ、見て!」


彼女の歓喜の声に顔をあげると、鮮やかな七色が俺の視界を覆う。その輝きに俺も思わず感嘆の声を漏らした。


「スッゲー!でっかい虹だな」
「本当、すごいよ。こんなの初めて見た」
「でしょ?私が一番に見つけたんだよ!」


その虹はまるで絵本からそのまま飛び出してきたようなきれいなアーチ型をしていた。

山本の興奮気味な声に俺も相づちを打つ。獄寺君は無言ながらも物珍しそうに空を仰いでいた。
驚く俺達を見て誇らしげな彼女。その足元は案の定、びしょ濡れだった。あーあ、ちゃんと下見て歩いてなかったんだ。


「何かラッキーだったな。こんなの滅多に見れねえし」
「きっと私の日頃の行いが良かったからだよ!みんな感謝してよね!」
「図に乗んな!明らかに10代目の日々の鍛錬のお陰だろーが。感謝すんのはテメーの方だ!」


彼女のおどけた笑顔に突っかかる獄寺君。二人とも相変わらずだなあ。
彼の極度の忠誠心には正直いつも焦らされるけれど、「ですよね10代目」とこんな満面の笑みで言われるとどうも逆らう気にもなれなくて。結局俺はいつも苦笑いを返すことしかできないんだ。


「獄寺って本当怒りっぽいよね。そんなにキレてたら若年ハゲになるよ?」
「あ?ケンカ売ってんのかテメー」
「まあまあ揉めんなって。二人ともハゲちまうぞ?」


とまあそんなことを考えている内に、俺以外の三人はいつもの如く言い合いを始めてしまった。こうなっちゃうと俺が間に割って入らないと止まらないんだ。
でも変なはなし、俺はみんなの言い合いしているのを見るのが結構好きだったりする。ケンカしているように見えるけど三人とも実はすごく楽しそうな表情してるんだ(山本なんて特にね)。

そういえば以前彼女に、「ツナが止めてくれるからいつも思う存分獄寺と喧嘩できる」って感謝されたことがある。
その時は喜んでいいのやらわからず「何それ」と笑ってごまかしたけれど、今になって考えればすごく嬉しい言葉だ。
同時に、彼女もやっぱり俺と同じ気持ちだったんだなあと思うと自然と笑みが零れてきてしまう。

と、その時だった。


「ツナ、逃げるよっ」
「え?――わ!」


いきなり右手首をつかまれ思いっきり引っ張られた俺は、危うく転びそうになった。
ハッと我に返ると俺の手を引く彼女と目が合う。彼女はニッコリと微笑むと何も言わずに走りだした。


「テメー!何10代目を拉致してんだ、待ちやがれ!」
「ハハハ、おもしれー。鬼ごっこなら負けねーぞ」


後方からそんな声が聞こえて、同時に俺たちの後を追う足音がした。
どうやらさっきの言い合いがもつれてこんな状況になったようだ。


「キャー獄寺が追ってくるー」
「って棒読みじゃん」
「アハハ、バレた?」
「バレたじゃないよ全くもう」


あんなに本気でキレる獄寺君に対して全く危機感の無い彼女を見てるとなんだか彼が可哀想になってくる。
でもやっぱり、こんなやりとりが少しハラハラするけど少し面白くってすごく大好きだ。


「でも獄寺の奴、今日はいつにも増して相当キレてるみたい。大丈夫かしら?」
「いいよ。俺が後でなんとかするから」
「あ、本当に?ありがとう」


何が、本当に?だ。始めっから狙っていたくせに。
でも走りながら感じる風と空に映える七色の虹があまりに心地良くて何かどうでもよくなった。

おそらく俺は、あと数分もしたら三人の仲介にならなければならないだろう。
もし仲直りできないで笑えないくらいエスカレートしちゃったら、なんて考えたらゾッとするけど大丈夫。あの虹を見ていると、上手くいく気がするから不思議だ。

万が一上手くいかなかった時でも、俺が何とかしてみせるんだ。だってみんなとはこれから先も、ずっと仲良しでいたいからね。








レインボー・コンチェルト




ちくわぶ様へ/一万打企画

***

ちくわぶ様への企画小説でした。わぶちゃんリクエストどうもありがとう!
ツナとほのぼのということでしたが友情出演で並盛ズも登場させちゃいました。その結果ほのぼのというよりはドタバタ落ち着きのない感じになってしまいました。
小説の題名は楽曲に詳しいわぶちゃんからしたら「?」かもしれないけれど、大目に見てね(笑)
ではでは、つたない文だけど良かったらまたリクエストしてくださいね!

ひな菊

2010/03/15

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