A
□片恋
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抱きしめる。
久しぶりに泉の温もりにふれて、嬉しくて泣きそうだ。
「おかえり」
「ばっか、帰って来たのお前だろ」
「あ、そっか‥‥、ただいま泉」
「‥‥おかえり」
泉は微笑んだ。俺は泣きそうなのに。
「なんで勝手に出てったのさ」
「‥‥だって‥」
寂しかったんだ‥‥―――
消え入りそうな声で泉は呟いた。
「高校のときはいつも一緒だったのに、なのに、お前帰り遅かったり‥‥」
寂しさを紛らわそうと友達と会ったり、飲みに行ったり、そういうのを繰り返してたら虚しくなった。
「お前だって!出てってから連絡一つ寄越さなかったし!」
「だってそれは‥‥」
泉から別れの言葉を聞くのが怖かったんだ。
「「‥‥‥」」
数秒お互い黙ってしまい、同時に吹き出した。
結局おれたちは、お互いが必要なのだ。
こんなことで泣きそうになる俺を、泉は笑って頭を撫でた。
→アトガキ