A

□片恋
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それは―――
前触れもなく唐突だった。


卒業して当たり前のように同棲を始めた俺達。
大学生の泉と就職した俺はなかなか時間が合わなかった。


『また飲んで来たのかよ』
『付き合いだよ。しょうがねーだろ』


俺が家にいるのが少なかったから、泉はよく遅くまで出歩くようになった。

そして、家出するみたいにいつの間にか出て行った。




スペアのキーは今だに泉が持っている、と思う。
家には泉が置いて行ったものがそのまま残ってるし、泉がいつ帰って来てもいいように歯ブラシなんかはちゃんと買い置きしてある。


「浜田?どしたの?もう酔っちゃった?」
「なんでもねーよ」


水谷も高校の頃と変わらない。相変わらずだ。


「今日は泉とあんまり話さないんだね。あんなに仲良かったのに」
「まぁ、いろいろあったんだよ」
「ふーん」


深く聞いてこなかったのがせめてもの救いだった。


(ホント、なにやってんだろ俺‥‥)


今日来たのは泉に会えると思ったからだ。
でも俺は、泉に会ってどうしたかったのだろう。


謝りたかった?
話したかった?
怒りたかった?
抱きしめたかった?


結局全部満足にできないままその日は解散となった。



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