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□哀音
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風呂から上がるとつけっぱなしだったテレビから、懐かしいメロディーが流れていた。
それはずっと昔、
―――中学の学祭で演奏した曲だ。
キッチンから飲み物を持って来た梶山が立ち尽くすあたしを見て肩に触れた。
「‥‥梅原?」
「‥‥‥」
ボーカルの女がアップに映る。
色素の薄い軽くウェーブした髪と整った顔のその子。
確かに歌声は綺麗だけど、この曲にはあっていないと思う。
いや、この曲は彼女じゃなければだめなのだ。
画面が動いてギターを弾いている泉ちゃんが映った。
「なんで‥‥」
なんで、浜田の歌を他の子に歌わせているのだろう。
「なぁ梶山、」
あんなにも想って
「あたし達は‥‥」
想って、想って、想って
「なんで」
そうやって出来た曲だったはずなのに‥‥―――
梶山は黙ってテレビのチャンネルを変えた。
最近ブレイクしているお笑い芸人がコントをしていて、笑い声が響いていた。
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