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□過去
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俺にはずっと憧れている人がいる。
その人は綺麗で、サラサラした髪、細い足、その上歌声は柔らかくしなやか。
年下であるのに俺なんかよりずっと大人びたやつ
「! 泉!」
「準さん!お久しぶりです」
「一緒に仕事とかすっげー嬉しい♪」
「俺も。準さん忙しいからぜんぜん会えないし」
「泉もだろ?」
―――始めて彼女に会ったりのは中三の夏だった。
忘れもしない、あの夏
***
「慎吾さん!いい加減にして下さい!」
「いいじゃん。準だって暇だろ?」
「だから俺は受験生だって言ってんだろ!!」
何度言ったってこの人は聞きやしない。
そして連れていかれたのはよく行く喫茶店。
「わりぃ浜田。遅れた」
「いや、いいっす。まだ泉も来てないし」
そこで会った男。金色の髪が印象的で、見た目よりずっとしっかりしていると知ったのは少し先。
「その子が準ちゃん?」
「可愛いだろ?」
「言っときますけど泉のがめちゃくちゃ可愛いんで」
その一言にカチンとした。
べつに自分が取り分け可愛いなんて思わないが、本人を目の前にして失礼だ。
「‥‥っと、泉!」
そいつに【泉】と呼ばれた少女がこちらにやって来る。独特な空気を持つその子は、確かに女の俺から見ても美人だった。
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