森林のトンネル‡小説
□苺
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ドアをノックする音が聞こえた。
「はい」
私は、勉強をする手を止めずに返事をした。
「失礼」
そう言って部屋に入ってきたのは、母だった。
「何かした?」
「うん。はい、これ」
母が差し出してきたのは、苺だった。一粒一粒が大きくて、パックに入っている。
「どうしたの」
苺を見ながら、そう尋ねると
「買ってきた。これ、あんたのね」
そういうと、パックから一粒だけとって、残りをよこされた。
どうやらその一個は、自分で食べるらしい。
「じゃ」
母は、それだけ言うと部屋を出て行った。
残ったのは、苺が一粒かけたパックだけ。
私は、勉強の手を休め、苺を齧る。
口の中には、甘さと少しの酸味が広がった。
おわり