死神

電車を待つ間
人間がずさ、ずさ、とおりすぎ
まるで私などいない存在のように
もしかしたら私は
今透明な人間に
なっているのじゃないかしらと
目の前の人間を後から
ぽん とホームへ突き落としたんだ
幸か不幸か
電車がそこへ通りすぎ
血飛沫が私の全身をおおう
しかし他人は私に気付かず
うるさい音をたてるだけであった

折れた首を

折れた首を 戻そうとして
反対へ ぐぐん 押したら
ぐきり 嫌な音がしたんだ
折れた首は ぷちりプチりと
ちぎれ ころころころ
君の足元へ転がった

飛び降りる

あの日の飛び込み台は
一体何mの高さだったろう
うまく頭から飛び込むことが
できなくて
いつも足から 水のなかへ
はいっていった
体全体に絵の具をかぶるような感触が
あまり好きではなかった私は
しかし何故 いつも
飛び込み台の上にたってしまうのだろうね


眼のない私は仕方が無いので
歌を唄います
その歌は風になり
いずれあなたの耳にも届くでしょう
しかし私には眼がないので
あなたの顔を見ることができない
ならばあなたは歌を唄い
私の耳に届けてください
口に鼻に耳に眼に頬に
首筋鎖骨のくぼんだその先
胸から手首お腹をとおり
局部太股爪先まで
全身をつかい私の裏側まで

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