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□黒
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その日の視界はなんだかいつもよりぼんやりしていて、早い時間に眠気が襲ってきた。
今日は仕事、早めにあがれたから行きたいとこあったのになあ、なんて考えながらもその脳の半分以上は睡魔にじわじわと侵食されていき、気がついたら夜の11時だった。
ああ、しまった
幸い、明日は仕事が休みなのを思い出したが、この退屈な時間はどうやってうめようか、いまだぼんやりとしたままの視界で、煮え切らない脳がゆったりと起動する音が聞こえる。
それはパソコンの起動音にも似て、カタカタカタカタ、ウィーイン、半分ぐらい稼動したところで自分の爪の異変に気づく

爪が真っ黒じゃないか
おまけにご丁寧にペディキュアまで(右足は塗りかけだけど)、塗るならもっと春らしい色とかあっただろうに自分、なんで黒
ああ黒で爪を塗ったのはいつぶりだろう、おまけに真っ黒
除光液切れてるんだったっけ、明日仕事なのに…いや、明日は休みだったなそう言えばあれ、なんで明日休み、入れたんだっけ、わたし
しかしぼんやりとした頭はそれを考えようとしてくれない

ブブブブッ、ブブブブッ、
充電器にさしっぱなしだったそいつは少々興奮気味にそのからだを揺らす

画面を確認してから少し溜め息が出た、わたしは期待していなかったのにこいつは期待しまくってたんだなあ、馬鹿な携帯(心なしかいつもよりバイブレーションの震度が強い気がする)


『もしもし?』

「はぁ、ばかなやつ」

『え?おれ?』

「なんでもない、気にしないで」

『寝てた?』

「ううん」

"俺と気分転換に散歩でもいかない?"

散歩だから部屋着でもいいよな、そう思いながら必要最低限のものをポケットにいれソファーにごろんと半回転。
しばらくすると玄関のドアが開き大男が入ってきた




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