黒い百合

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 あまりクィディッチには興味がないのだけれど、去年まではチャーリーに誘われて何やかんやとここ数年間はグリフィンドール戦だけは観に来ていた。でも、もうチャーリーも卒業したし、フレッドとジョージにも強くは誘われなかったので今年は遠慮するつもりだった。…のだけれど、あまりにもお義母さんが熱くなっているものだから、渋々グリフィンドールの初戦位は観戦することにした。ハリー・ポッターが百年振りの最年少シーカーに選ばれたそうで、私には良く解らないがチャーリーよりも凄いらしい。流石はあのジェームズ・ポッターの息子だ。
 最初はお義母さんの隣で観ようかと思ったのだが、試合中のお義母さんは物凄く盛り上がることを思い出して、別の席に座ることにした。観客席を見回すが何処も込み合っている。試合は良く見えなそうだが、人が少ない場所を選んで席に着く。改めて観客席を見回すと一瞬彼と眼が合った。しかし、互いに直ぐに逸らした。彼がホグワーツに戻ってきてから、私達はずっとこうだ。最低限の仕事の話をする時位しか口もきかないし、眼も合わせない。少し寂しくなって眼を伏せた。
 暫くすると試合が始まった。ぼんやりと顔を上げれば試合が着々と進んでいた。時折リー・ジョーダンとお義母さんの遣り取りが競技場内に響く。チャーリーのお陰でルールはわかるけれど、生憎と私には広い競技場で起きている複数のことを同時に処理出来る器用さは持ち合わせていない。何処を観れば良いのか少し迷った末、去年まで同様にシーカーを追うことにした。
 
 
 不意にポッターの箒が妙な動きをした。
 
 
 直後に彼の魔力の気配。素早く彼を見遣れば、じっとポッターを見詰めて口を動かしている。数秒彼を見詰め、彼の魔力の流れと口の動きを読み取る。呪いに対する反対呪文。事情は良く解らないが、彼と同じ呪文を唱え始めた。彼の魔力に自分の魔力を乗せる。此れで私は対象から視線を外しても大丈夫だ。ポッターから視線を外し、代わりに競技場内に視線を走らせる。此の近く、きっと競技場内の何処かにポッターに呪いをかけている人間がいるはずだ。
 自分の魔力を彼の魔力に乗せることは難しいことじゃない。でも同時に別の魔力を辿ることは難しい。ただ無言呪文が得意な彼が反対呪文を態々口に出しているということは、呪者も同じ方法を取っているに違いない。だから、彼と同じようにポッターを見詰めて呪文を口に出している人間を探す。何処、何処にいる。いた、見付けた。あれは…。
 突然、フツリと彼の魔力が途切れた。
 
「えっ…」
 
 彼を見れば立ち上がって何やら慌てている。何かあったのかと一瞬心配するも、呪いのことを思い出して私も慌ててポッターを見て反対呪文を再開しようとした。しかし、其の時には競技場内は歓声に包まれていた。ポッターがスニッチを取っていた。
 


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