黒い百合

□ALWAYS
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 脚がもつれて上手く歩けない。肩で大きく息をしながら足を止めて壁に凭れた。息苦しいのは気のせいではないのだろう。何せ首を大蛇に噛まれたのだから。そのことを思い出した途端、フッと意識が飛んだ。走馬灯を視るというのはこういうことなのかもしれない。
 
 
 緑の瞳を視た。
 
 
 今更、世界が終わったことを実感した。
 魂の半分が世界から消え逝く感覚。身体から力が抜けて、冷たい床に座り込む。最期に視たものは緑の瞳。一番愛しいリリーと同じ緑の瞳。其れに見守られて息絶えられたことは確かに幸せだった。
 
 セブが幸せなら、私も幸せ。
 
 一筋涙が流れたけれど、心は穏やかで笑みが零れる程だった。
 
「…セブルス……セブ…」
 
 ゆっくりと立ち上がる。
 
「今、行くから。」
 
 零れた涙をぐいっと拭った。
 
「私も今往くから、少しだけ待ってて。」
 
 魂の消えた器だけになろうと、私の半身に変わりはない。何処に居るかは、解っている。先刻よりかはしっかりとした足取りで歩き出した。
 
 
―――………
 
 
 ゆっくりとセブルスの隣に膝をつき、乾き切っていない涙の跡をそっと撫でた。
 
「…セブルス」
 
 覗き込んだ黒い瞳は鏡のように無感情に私を映した。此の瞳が最期に映したのは初めて出会った時から恋い焦がれ続けた緑の瞳。
 
「良かったね、セブ。」
 
 瞬きをしたら、また涙が零れた。無感情な瞳に微笑む私が映ったのを見て、其の瞳を閉じさせた。
 
「セブ」
 
 ポケットから小さな薬瓶を取り出しながら語りかける。
 
「私達は二人で一つ。
 だから一緒にいく。」
 
 生まれた時も一緒だったなら死ぬ時も一緒。
 
「愛してる、セブ。
 ずっと一緒よ。」
 
 一思いに薬を煽った。
 
"I love you, Sev.
We are together,ALWAYS."
 


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