Unshakable heart
□第五話
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―――…あの後、一気に騒がしくなった宿屋のおかげでハクアは目を覚ました。
彼はベッドに預けていた体をダルそうに起こし、見事に荒れた部屋を見回して、小さく顔をしかめた。
「……おい、お前らぁ。…朝っぱらから部屋で暴れるんじゃねぇよ。他の人の迷惑でしょーが…」
寝起きのせいか、どこかぼんやりとした感じでそう言ったハクアは、「くぁ…」と猫のような大きな欠伸を一つして、再び眠りに着こうと布団に手を伸ばす。
……が、それよりも先に彼の腕を掴み、制したのは頬を引きつらせたヒスイだった。
「………いい加減に…」
「……あ?」
「いい加減に起きろ!このドアホッ!!」
バキッと、なんとも痛々しい音を立てながらヒスイの拳は無防備だったハクアの頬にクリティカルヒットし、彼の体は見事に後ろ向いて倒れ込んだ。
* * * *
「――――いや〜、すまんね。俺、どーも朝が苦手でさぁ…。無理やり起こされると、寝ぼけ暴れちゃう癖があるんだよねー」
ヘンゼラに続く街道を歩いている途中、ヒスイに思いっきり殴られ、真っ赤に腫れてしまった頬を押さえながらハクアは悪びれた様子もなくヘラヘラと緩く笑い、そう言った。
「……てかよ、ヒスイさん。寝起きで無防備な人間を殴るのってどうよ?しかも力一杯…」
「自業自得だろ」
ヒスイが小さく鼻を鳴らしてそう言ってやると、ハクアは顔をしかめながら「…ひでー…」と嘆いた。
そんな彼に対して、「酷いもんか!」と声を荒くさせたのはシングだった。
「お陰でこっちは死ぬかと思ったんだぞ!」
「あの銃声でコハクも怯えちまうしな。余計に出発までに時間がかかっちまったじゃねぇか」
「あー……申し訳ない、です…」
二人の言葉にすっかり縮こまってしまったハクアは、腕に抱えていた木箱で顔を隠した。
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