Unshakable heart

□第一話
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―――……バラバラに砕け散ったコハクのスピルーンを取り戻すための旅に出たシングたち。彼らは、まず川沿いの街、キュノスに向かっているのだが……。



「おい!お前のソーマはただの飾りか!?さっさとあの魔物を片付けろ!」

「初心者に無茶言うなよ!さすがにあの大きさは無理だって!」



かなり大型の魔物に追われているのであった。

どんどん速度を上げて接近してくる魔物にヒスイは小さく舌を打つと、自分の少し先を走るシングを鋭く睨んだ。


「くそっ!どーすんだよ!このままじゃ、追い付かれちまうぞ!」

「とっ、とにかく隠れれそうな所を探して―――」

「その前に追い付かれんぞって言ってんだよ、このバカっ!!」


ヒスイが声を荒くさせたその時、彼に腕を引かれながら走っていたコハクが虚ろな目で何かを指差し、「お兄ちゃん……」と感情の薄い声音で呟く。


「なんだ、コハク」


シングとヒスイがコハクの指差す方を見ると、そこには自分たちとは正反対に、のんびりと歩いている男の後ろ姿。


「人!?……危ない!逃げろ!!」

「んー?」


シングの大きな声に、気だるそうな声を上げて振り返った男は、全速力でこっちに迫ってくるシングたちと魔物の姿に「あーらら?」と、少しだけ驚いたように目を丸くさせた。
しかし、彼が逃げるような素振りは一切見えない。


「おい!何やってんだ!早く逃げろ!!」


男との擦れ違い様、ヒスイがそう怒鳴るが、男はやはり逃げる素振りを見せず、ただニッと怪しく口元を緩めて右腕をゆっくりと魔物の方へ突き出した。彼の手には一本の小太刀が握られており、その刃は日射しで鈍く光っている。
男の目の前まで迫った魔物が大きく口を開く。「危ないっ!!」というシングの叫びと同時に、男が緩めたままの口元を静かに動かした。



「…………影喰い、」



そう呟いた次の瞬間、ばくんっ、という大きな音と共に魔物の姿が忽然と消え失せた。


「―――なっ…」

「何だぁ?!」


突然の事に目を丸くするシングとヒスイに、男は小太刀を構えたままニヤリと怪しく笑みを浮かべながら振り返えると、「どう?驚いたぁ?」とおどけるように肩を竦めた。






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