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□君と雨宿りをしに行こうか
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「貴志くん!待って!」
家を出ようとした瞬間、塔子さんの声がした
パタパタと足音を響かせながら塔子さんが走ってくる
「貴志くん、これ、傘!貴志くん用のを買ったんだけど、この色、どうかしら…」
綺麗に包装された包み紙をとると、中から綺麗な黄緑色の傘が見えた
黄緑色だけど、深い色で少し緑寄りの色だ
「わ……綺麗」
「本当に?!良かったわ、気に入ってくれて」
塔子さんがホッとしたような表情をする
「貴志くんにどれが似合うかなって結構悩んで買ったから、
貴志くんの嫌な色だったらどうしようかと思っていたの、
私、最近の男の子の趣味わからなくて」
もう歳ね、と笑う塔子さん
「そんなことないですよ、俺、この色気に入りました。
早速今日さしてっていいですか?」
「もちろんよ」
塔子さんから黄緑色の傘を受け取る
この傘を選ぶのにどれくらい迷ってくれたんだろう
傘売り場の前で考えこむ塔子さんの姿を想像してみたら
なんだか胸が温かくなって
嬉しくて笑ってしまった
「それじゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい!貴志くん」
塔子さんの嬉しそうな顔を見つめながら黄緑色の傘をさして歩き出した