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□バースデイ・クライシス
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『よっ、山本!』
「ディーノ、さん…」
現れたディーノさんは、いつもと変わらない笑顔を浮かべていた。その笑顔を見たら、きゅうって胸が痛くなって、居てもたってもいられなくなった。
だから、駆け寄って腕を掴んで、なんにも言わずに奥のオレの部屋に直行。
後ろでディーノさんが驚いて何か言ってたけど、今は気にしない。
ようやく部屋に入って扉を閉めると、ディーノさんが何か言う前に思いっきり抱き着いた。
『っ、やまも…』
「なんで、誕生日だって言ってくれなかったんですか!」
『え!…な、なんで知ってるんだ…?』
「……小僧が教えてくれた。」
あいつか、と呟くディーノさんのばつの悪そうな顔をじっと見つめて、どっかで泣いてしまいそうなのを堪え、答えが返ってくるのを待つ。
『オレも色々考えて、言わなかったんだよ。…当日、どうしてもこっちに来れなかったんだ。…誕生日、なんていったら、お前きっとなんかしてくれるだろ?』
「あたりまえ、じゃないですか」
『その時に、お前の顔が直接見れねぇのは嫌だったんだよ。』
絶対、仕事手に付かなくなるだろ?
なんて、困ったみたいにディーノさんが言うから、ますます離れたくなくなって、ずっと触れたかったディーノさんの胸にぐりぐりと顔を押し付ける。(痛いだろうけど、気にしない。)
でも、やっぱりちょっと悔しいから、顔を押し付けたまま腕に力を込めて。
「…でも、一番に祝いたかった、です。」
『山本…』
ディーノさんの腕が、オレの背中に回されて。抱きしめられればもう今までのもやもやが吹き飛ぶ感じがした。
『…なら、今から祝ってくれねぇか?』
「もちろん!でも、…オレなんもプレゼントとかなくて…」
『そんなんいいっての。お前にだから、祝ってほしいんだよ。いいだろ?』
「…うん。…ディーノさん、…誕生日おめでとうございます。」
顔を上げて、自分のめいっぱいの笑顔で言ったら、ディーノさんもキラキラの笑顔で答えてくれた。
この後のことは、…オレとディーノさんだけのヒミツ!なんてな。
―――――――
(あなたのそばにいられることが、
さいこうのプレゼント!)