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□声、届いていますか
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『まだ声、でねぇのな』





「…ーな、……ね…ぇ゙」




開いた薄い唇から零れるのは掠れた途切れ途切れの意味を為さない言葉のかけら。

山本が言葉を返す前に、自分の声に眉を寄せて唇を引き結ぶスクアーロに瞳細めるとぽんぽんと頭を撫でやって。




『いーよ、辛いんだったらしゃべんなって』




「……」




開いた唇に指を押し当ててそれ以上を塞いでしまうとばつの悪そうな表情を見せるベッドの上の恋人に楽しげに笑って。



『色々忙しくて休めなかったんだろ?』



この場の惨状を指して言えば途端に眉を潜めて頭を掻くその様子にくすりと小さく笑って、立ち上がる。
そうすれば見上げる相手の視線に気付き、振り返っては笑みを返して、



『なんか飲むだろー?水でいい?』


確認を取るように言えば、少し迷う素振りを見せながらも頷く相手に表情を緩ませて、ベッドサイドにあったグラスに同じく置いてあったボトルから水を注いで差し出すも、いっこうに手に取る様子がない。
不思議に思って相手を見つめれば、突然に引き寄せられ唇に触れた柔らかさに瞳を丸くして。




『…っ、なるほどな』




山本を見るスクアーロの瞳に楽しげな色を見出だせば山本も理解したようで、先程自分がグラスに移した水を自ら含み、そのまま唇を重ねれば流し込んだ水に逆らうように侵入してきた舌を感じて、ゆっくりと瞳を閉じ。




(口移ししてほしかったのな)






ようやく唇が離れて瞳を開き、互いの視線を絡ませて笑い合えば、


ああ、後は二人の世界へ落ちていくだけ、なのだ!







――――――


(ちゃんと心が、キャッチしてるよ。)
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