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□せめて、夢の中だけは
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そう祈って、今日も君に会いに行く。
「せめて、夢の中だけは」
くらい、なにもみえない
目を開けているのか、
それとも閉じているのか。
もしかしたら暗くもないのかもしれない。白い、白すぎて、なにもみえないのかも。
どっちにしろ、みえない。
わからない。
そんな中で聞こえた、あの人の、声。
「どうしたんですか?道にでも迷ったんですか?」
ちがうんだ、あんたにあいに、きたんだよ。
声に出したつもりが、全然声が出ない。唇は動くのに、音は聞こえない。
これじゃ、伝えられない。
そう思ったけど、あの人には伝わったらしい。
「おやおや…僕に、ですか?困った人ですね、あなたは。」
おれには見えなくても分かる、あの人が笑った顔。響いた言葉だけじゃ分からない、あの綺麗な瞳を細めて笑ってるんだ。
そう。あんたにあいにきた。いま、どこにいんの?
「ここにいますよ。」
ここっていわれてもわかんねぇよ。みえねんだもん。
「見えなくても、僕は君の傍にいます。」
…それ、ずるい。
「クフフ、本当のことですから。」
すとーかーっていうんだぜ、そういうの。
悔し紛れに言ったら、楽しそうに笑ってる、あの人の顔が見えた気がした。
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