黒色本棚
□心惹かれて百色万華鏡
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一部分だけじゃなくて、一から十まで知っていたい。黒子テツヤという人間を構成する事柄全て、何が好きで何が嫌いかなんて当たり前。
テレビ番組は何を好み、本なら贔屓の作者は誰か。
笑顔も泣き顔も目に焼き付けて。
穏やかな寝息も起き抜けの間抜けな声も聞き飽きるほどに。
細い体も白雪のような肌も触れていたい。
清も濁も知っていたい、と思うほどにお前に溺れてるんだ。
「どうして、全てを知りたがるんですか?」
とある休日、強引に上がり込んだ青峰を一瞥する黒子。
たまっていた本を読みきってしまおう、と楽しみにしていた休日。集中していた時に乱入され、眉を不機嫌そうに歪ませる。
前触れもなく来るのはいい、慣れている。しかし、後ろでガサゴソと部屋を漁られては気が散る。気にもなるし、部屋が散らかる。
青峰が元通りに片付けるとは思えない、後始末は黒子がするのだろう。そんな事に時間を割いていたら読書が進まない。
どうして部屋を漁るのだ、と訊ねれば真顔でこう答えたのだ。
「オレの知らない事があるのが気に入らねー。」
、と。
「浮気を疑う恋人のようですね。」
漁り方のねちっこさに、ついこぼした一言。
一通り漁り尽くした青峰は満足したのか、現場を散らかしたままベッドを占領する。
「テツの事なら何でも知っていたいって、思っちゃいけねーのかよ。」
と、拗ねたように呟く青峰。
彼にこのような行動を起こさせた原因、というか元凶というかに黒子は心当たりがある。
最近レギュラー入りした黄瀬。黒子っち、という愛称で呼んではベタベタと引っ付く。それが面白くないのだろう、と薄々は感じていた。
「馬鹿ですか、青峰君。焦らなくてもキミはボクにとって一番です。」
最後に添えられた、相棒でしょう、の一言。
それに満足げに笑った。
終