** REBORN **

□8年で失ったモノ
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「山本」





「何」















          8年で失ったモノ



















 あれからもう時間が経っている。そう感じるのはこういう時だ。

みんなで集まって食事をしている時。一人一人の表情がとても大人に見えるのだ。

まぁもう23なんだし、子供に見えるのも難だけど、大人に見えるのも少し痛々しく感じた。
理由なんて判らない。ただ昔が懐かしいんだと思う。






「何黙ってるんだ? 獄寺」






 此奴もそうだ。あの頃とはもう違う。背も体格も顔立ちも大人だ。
前はオレの方が背が高かった。なのに今じゃ普通に追いつかれてる。子供らしさなんて無い。


オレだって昔より笑う回数が減ったような気がする。昔のような笑顔は帰って来ないような気もする。


 さっきまで守護者同士で食事をとっていた。すると獄寺に呼び出された。




そこで立ち上がり、そのままついていったら、獄寺の部屋のベランダに辿り着いた。
そこから見えるのは森林だ。だってここは並盛じゃない。ここはイタリアだ。
もうここに来て何年か経つし、馴れてしまった。時々寿司が恋しくなる時もあるけれど…。
いろいろ捨てて無くなった物も多いけど、オレはここに来た事に何の悔いもない。



 2人きりになったものの獄寺はずっと森林を見つめている。遠くを見つめている。
その先に何かあるのかと目を凝らしてみるが、ただ緑が続いているだけだった。






「…お前、笑わなくなったな」
「へ?」






 予想外な一言だった。
 そして獄寺は煙草に火を付け、くわえた。






「中学ん時みたいに笑わなくなったなっつってんだよ」
「そうか? オレはそんなに変わらねぇと思うけど」
「…」






 獄寺がまた黙り始める。全くこっちに顔を向けようとしない。
次は煙草の煙をずっと見つめるようにしていた。普段の獄寺とは違っているような気もする。



 実際、オレは嘘をついた。笑わなくなったのはオレ自身自覚してる。

たぶん此奴とはずっと一緒に居るから、気付かれたのかも知れない。
仲間はそういうのに敏感なんだなと思う。きっとツナも気付いてるんだろうし。




 たぶん笑わなくなったのは、マフィアが遊びでない事を自覚してからだと思う。

それまではずっと遊びだと思っていた。やけにリアリティな遊びだな、とは思っていたけれど。
それから黒曜の事件とか、リング争奪戦とか、あの不思議な体験……。




今思えば死にかけるような命がけな事をしていたんだ、と気付かされる。


 でもそのおかげで強くなれた。何かを守る為の力を得ることが出来たんだろう。
ついでにツナも凄い奴だと思う。彼奴に会えなかったら、今のオレは居なかった。





普通に日本で野球をしてたか、親父の寿司屋を継いでたと思う。
 そういう事に気付かされてから、オレは笑顔が曖昧になってきたんだ。
きっと写真を見ても、昔のオレの笑顔はもう再現されない。
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