FIAMMA

□秋桜
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「えー、では、今日から第三段落に入るわけだが・・・」

暖かな春の日差しが注ぐ窓辺。
六限目の国語の授業。
教師の声は淡々としていて、睡眠欲を増幅させる。
彼らも、早々に船を漕ぎ出した内の二人だった。

「一段落、二段落と、主人公の生い立ちについて書かれてきたが、次からはこの話の本題、主人公の少年の『初恋』が描かれてくる」

眠かった意識が、唐突に覚醒する。
一人は、机に突っ伏していた顔を上げ、もう一人は後方を振り返る。
目が合い、互いに慌てて逸らした。

「ああ、そうだ、その前に。今日の放課後に予定していた補習だが、先生に用が出来たので、今週の土曜に延期する」

上がるのは、生徒たちの不満の声。
そんな中、二人の少年の頭は意図せずして同じ事を考えていた。


+秋桜+


「あの、さ。獄寺君。今日、家に行っても、いいかな?」
「は、い。お待ちして、ます・・・」

山本は、補習が無くなったので喜び勇んで部活へ行った。
二人きりの帰り道。
やけにぎこちなく、約束が交わされる。

「じゃあ、服着替えたら、行くね」
「はい」

T字路をそれぞれに分かれて、一度自宅へ。
そして、それぞれに箪笥の奥を探った。

◆◇◆
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