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□酒盛・半刻
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なぁ、なあなあ幻ちゃんて。

何べんも聞くなや、いい加減しつっこいわ。

せやかて気になるやないか。なあ、俺ら親友やろ?



至t山にある山賊達の住処、そこから少し奥まった所にひっそりある、一軒の建物。
本来の所有者はもういないのか、初めて中に入った時にはもう壁の朱色も天井の金の模様も剥がれてぼろぼろになっていた。
そこで酒を酌み交わす者が二人。この建物の発見者とその親友である。
彼等は誰も知らないこの場所を時折訪れて、酒盛りをしていた。
それはただなんとなく二人だけで飲みたいからだったり、他の誰にも聞かれたくない話をするからだったり。
今日の目的は後者のようだ。

「親友とそれは関係あらへんやないか!んなモン、言いたないわ」
一見して気が短いとわかる男。会話を重ねる毎にその男の表情はますます凶暴になっていく。
卓の向かいに座る男は逆に相手がむきになればなる程楽しくなっているようで、更に会話を続ける。
「親友やったら何でも知っときたいやろ?それにな、いまは俺が頭代理でやっていっとるんや。幻狼」
「何でもかんでも知らんでええわっ!おーっ気色悪!で!代わりが何やっちゅうねん!」
幻狼が即座に言い返した。親友と云うだけあって息はぴったり、他人が見ればそのテンポの良さにコンビの芸人だと思うかもしれない。
幻狼の激しいツッコミにも動じず、相方の攻児は再びさらっとボケ返した。
「あの人がふらーっとこっち来た時、どないな風に迎えるか考えとかなあかん。頭の恋人に失礼でもあったら、俺頭代理失格やないか」
「こっ……お……」
ツッコミがボケに負けた。コンビ芸人失格である。
酒のせいでなく顔をさぁっと赤らめた幻狼を見て、攻児は笑いながら卓に身を乗り出し、なぁ、と続けた。

「なぁて。井宿はんとどこまで仲ようしとるん?」


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