文字

□花梨酒
1ページ/7ページ


「うー、……ん?」
目覚めてすぐ、異変に気付いた。伸びをして唸った声が掠れている。
そういえば夕べは少し寒かったなと思いながら、喉に手をやる。わずかだが痛い。
風邪の前兆かもしれないとも思ったが、これだけの事で軫宿に力を使わせるのは申し訳ない。水で濯いでおけばよくなるだろうと、井宿は顔を洗いに行く事にした。
この時、遠慮なんかせずに軫宿の能力を頼っていれば良かったのだ。

昼になると喉はずいぶんと悪くなっていた。
風邪なら仲間達に移ってしまうから一緒に居る訳にいかない。
自室に昼食を運んでもらったのだが、食物がそこを通った時の痛いような気持ち悪いような感触に、ほとんど食べる事ができなかった。
流石にどうしたものかと考えていると、
「おい、メシにも来んとどないしたんや」
目付きの悪いのが、突然断りもせず入ってきた。表情を見るに、どうやら心配して来てくれたようだ。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ