ミステリアスパニック!
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そのまま私が呆けている間、電脳空間では2対1で、ロックマンが敵のネットナビと戦っている。しかも戦況は圧倒的にロックマンの不利らしい。
(ロックマンが押されてる…やっぱり私が、私が行かなくちゃ。そうでしょ、熱斗…!)
「っ、やっぱり行く!!」
「だめだっ!!」
「どうして!?このままだと、ロックマンがデリートされちゃうかもしれなっ…」
「負けない!!!」
「…!!」
「ロックマンは負けない、絶対に!!デリートなんかされないっ!!」
その時の熱斗の横顔は、今まで見た事無いような強い表情で。
(熱斗…こんな顔するんだ…)
私は、息を飲むしか無かった。
「バトルチップ、ドリルアーム!!」
熱斗がチップを送ろうとした時だった。
<熱斗くん、後ろ!!>
「へ? なにが…って、バオン居る!?」
「「「バウ、バウ!」」」
そう、ロックマンに言われて振り返った先に居たのは数匹のバオン。しかも私たちに向かってめちゃくちゃ吠えてくる。
「わー、いっぱい居るー!こう見ると結構可愛いねバオン!」
「イヴちゃん、そんなこと言ってる場合じゃないぞ! 多分こいつら、俺たちを敵だと認識して……」
<襲ってくるよ!>
「「「バウバウッ!」」」
「きゃあっ!」
「うわああああああ!!」
勢い良く飛び跳ねてきたバオンに倒され、バランスをくずす私たち。
しかも、熱斗は自分のPETを、私は愛銃「スチェッキン・ピストルを横にあったベルトコンベアまではじかれてしまった。
「ロックマンが!!?」
「私の銃がっ!!」
お互いに凄く大事なものがベルトコンベアでどんどん遠くへ流れて行ってしまっているため、かなり焦る私たち。まずい、あの銃は私の唯一の武器なのに。スチェッキン・ピストルを失ったらまさに私は用無し!それはマズイ!!
そう思い、私と熱斗は一目散にベルトコンベアのスピードに合わせて走り始めた。そして私は走りながら大変なことに気付いてしまった。
「ね、熱斗やばいよ! このベルトコンベアの行き先…プレス機だよ!」
そう、ロックマンのいるPETと私の愛銃を乗せたベルトコンベアの行き先は…いらなくなったものを無惨に上からペッタンコに押し潰すプレス機。このまま行くとPETも銃も見事にペッタンコだ。
(だめ、それは絶対だめーっ!!)
しかも、そんな私たちを後ろから襲ってくるバオンの群れ。一体どうしたらいいんだろう。
「熱斗、このままじゃ……って、ねねねね熱斗!?」
「わわわわわ、ややややめろってバオン!ずり落ちるずり落ちる!」
なんと、バオンが熱斗の短パンをくわえてずり落とそうとしていた。熱斗は何とか自分の短パンが脱がされないように手で抑えて頑張っている。ね、熱斗のパンツが…見えないけど見えそう!
「いやぁーっ熱斗のヘンタイ!!」
「おっ俺じゃないよぉ!バオンが引っ張ってんの!!」
「バウ!」
「はははははは、いいザマだな光熱斗!!」
なんとか熱斗がバオンを追っ払って持ち直したものの、ロックマンのPETと私の愛銃はベルトコンベアで流され、もうプレス機がは目前だ。私たちも必死に走るけど、柵のせいでベルトコンベアに近づけず手が打てない状態。
(このままじゃ、私の愛銃だけでなくロックマンも危ない!)
「…っこうなったら!!」
「イヴちゃん!?何してっ…」
(何か、何か良いものないかな!?)
と思い、上着の黒ジャケットを必死の思いでさぐる。
(あった、あった!何か分からないけど、投げるのに良さそうなもの発見!!)
私はそれが何なのかも確認せずに、渾身の力をこめてブンッ!と、ベルトコンベアで流れている熱斗のPETと私の愛銃めがけて無我夢中で投げつけた!
「当たれぇっ!!」
ガッ!!
私の真剣な願いが届いたのか、その投げつけた物体は見事に熱斗のPETと私の愛銃にブチ当たった。
そしてそのぶつかったお目当ての二つは跳ね返り、私や熱斗の居る近くへ飛んでくる。それをナイスキャッチし、ほっと一息つく私たち。
「ナイス、イヴちゃん!!」
「良かったぁ私の愛銃!!はぁ〜本当に良かったー!!」
そんな感じで喜びに浸っていたのもつかの間。
気がつけば、さっきまで私たちを追っかけてきていたバオンたちの姿が見えない。
(…? 何か、嫌な予感がする。)
私は銃の安全装置を外し、いつでも狙い撃てるようにスタンバイしておく。
「光熱斗…悪いが貴様にこの計画を邪魔されたくは無いのでな。」
「少々、荒っぽい手を使わせてもらうぞ!」
ほら、予想通り。さっきの気持ち悪い男二人が現れ、自分のPETを前にかざしだした。
(PETを出してきたけど…なに、する気?)
「「ディメンショナルチップ、スロットイン!」」
奴らがそう叫んだ瞬間。
電脳空間ではなく、この現実空間に。
ネットナビが、現れた。
「えっ………えええええええええええええ!!!?」
(な、なにこれなにこれ!!ていうかデカいよこいつら!!)
あれ、確かネットナビって電脳空間に存在するものなんじゃなかったか。現実世界にネットナビがいるだなんておかしい。
「くそっ、アステロイドを実体化させてしまった…!」
熱斗が悔しそうに呟く。ああ、あれがアステロイドっていうのか。あまりのアステロイドの巨大さに、私の銃の攻撃通じるのか少し不安になった。
「光熱斗ぉ!!今回こそは痛い目見てもらうぜぇぇえ!!」
獣のような姿をしたネットナビ…あ、アステロイドか。そいつが雄叫びをあげ、こちらへ真っ直ぐ向かってくる。両手についた猛猛しいツメを振りかざして、私と熱斗を切り裂き殺そうとばかりに。
「…………!」
ガシャン。
そんな相手に対して私は無言で人差し指を引き金にかけ、チャッと前にスチェッキン・ピストルを構えた。
そして。
バン、バン!!
耳をつんざくような銃声が工場内に響き渡り、獣のようなアステロイドの左腕が宙に吹っ飛んだ後、その左腕はデリートされていった。
「ぐっ……ぐああああああぁぁぁっあぁぁぁ!!!」
「ビーストマン!!このガキィ、やってくれたな!!」
(…なにいってんの?わざわざ急所外してあげたんだから、むしろお礼が欲しいくらいよ)
「だってあんた達は私の敵でしょ。ほら、私が憎いなら殺しに来ればいいじゃん」
「イヴ、ちゃん……!?」
背後で熱斗が私の名前を呼ぶ。でもごめんね、今はスキを見せられないから振り返ることは出来ない。
「ねえ熱斗、このアステロイド達って殺しちゃっても大丈夫だよね。頭狙ってもいいよね」
「………。」
熱斗は無言。たぶん熱斗自身も、加減をどうするのかハッキリ言えないんだろう。
ならここは、私のやり方でやらせてもらおう。
「じゃあ、デリートするね。」
そう呟いた後、痛みにもがいている獣のようなアステロイドに再び銃を向ける。今度は腕じゃない、頭にだ。
けど、私はもう一体アステロイドがいたことを意識していなかった。
「ナメるなよ! ネオンライト!!」
(なっ、やばっ!)
その獣のようなアステロイドの後ろに居た、もう一体の敵が技を繰り出す。
ピカッ!と激しい光が放たれて、思わず目をおおう。
「うっ、まぶしっ…!!」
「今だぁ!!スラッシュクロー!!」
(しまったっ!! このままじゃ、やられる!!)
「イヴちゃんっ!」
目がチカチカする最中、私の耳は不思議な音をとらえた。
………ブロロロロロロロ…!
「へ?」
(どうしてエンジン音がっ……)
聞こえてくる、確かに。
そしてその音はだんだんこっちに近づいて…
ドガァン!!!
ドドドドドド……キキィィィィ!!!
「…助けに来たぞ、熱斗、イヴ。」
腕で目元を覆ってるせいか見えないけど、こ、この声は…!
「ライカっ!!」