ミステリアスパニック!

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1時間後。
再びあの部屋に集まった、イヴ、貴船総監、真辺、祐一郎、熱斗とライカ。


「では今からシュミレーター室に移動する。イヴくんはシュミレーター室の中へ、我々はモニター室のほうへ移動する。」


その貴船総監の言葉に頷き、全員が移動を始めた。
ネット警察内の廊下で真辺に励まされるイヴ。


「イヴちゃん。応援してるけど、くれぐれも無理はしないでね。」

「真辺さん…。私、がんばる!試験もがんばるけど、無理しないようにもがんばる!!」

「ええ、がんばって。」


その時の真辺の笑顔が、少し不安がちだったイヴの心を優しく包んだ。







シュミレーター室。


《では、イヴくん。今からネットセイバー認定試験を開始する。今から電脳空間をシュミレーター室に展開させるから、君はそこに現れたウイルスを全滅させるんだ。使用する武器を見せてくれ》


モニター室からスピーカーを通じて聞こえてきた貴船総監の声に頷き、自分の愛銃であるスチェッキン・ピストルを取り出して掲げる。


「はい。この銃です」


イヴが銃弾をスチェッキン・ピストルに補填したのを確認し、貴船総監が言う。



《うむ、ではスタート!!》



その声と共に、ヴンと音を立てて広いシュミレーター室に電脳世界が展開される。マス目状の床や独特な壁や宙に浮かぶデータのかたまりが目に映ったかと思うと、次の瞬間にはイヴの前にメットールとポワルド、サボテコロンが出現した。



《メットールならまだしもポワルドやサボテコロンだなんてくせのあるウイルス、ウイルスバスティング初心者のイヴちゃんに倒せるかな…!?》

《かなり特別な試験だ。この位のレベル、突破してもらわんとな》



熱斗と貴船総監の話し声を耳に挟みながら、引き金を途中まで引いて銃の撃鉄(ハンマー)を起こして発射準備を完了させるイヴ。そしてウイルス達は間もなく、そんなイヴに容赦無く攻撃を放ってきた。
メットールが身の丈に合わないその大きなツルハシを振り下ろそうとした、その瞬間。


バン!!


(まず一匹。)




「メッ……ト…………」


しゅぅん。黄色いヘルメットを見事に貫かれたメットールは悲しい音を立ててデリートされた。
イヴがためらいなく発砲したその銃口からはもくもくと煙が立ち上り、辺りには火薬の匂いが立ちこめていた。




(あとのやつも、全部やっつけるんだっけ。)



カチャ、と再び銃を構え、バン、バン、と2回発砲する。その銃弾が直撃したポワルドとサボテコロンも先ほどのメットールのように、デリートされていった。



《すげぇイヴちゃん…マジ容赦無いなぁ》

《……相当の銃の腕だな。》



だが、これで試験が終わるはずもなくまた次々と様々なウイルス達が現れる。
ウイルス達はイヴに襲いかかるが、俊足と身軽さを生かしたイヴに全てかわされ、振り返り様に銃弾を浴びてデリートされていった。

その時の彼女の青い目は冷え切っていた。いつものように笑ったり拗ねたりするイヴからはとても想像のつかないほど、冷静で情の欠片も無い目だった。

ミッションの時は頭が切り替わるのだろうか。ただ、淡々と銃を撃ち続けるイヴ。



《イヴちゃん……。》


そんなイヴをモニター室から見守る真辺の心配そうな呟きも、今の彼女には届かない。単調なリズムの銃声と、時折弾を補充する音、ウイルスを撃ち抜きそしてデリートする音だけが聞こえていた。

いつもの陽気な彼女とはまるで正反対なその冷たさに、モニター室に居た全員が息を飲んだ。







約30分後。



バン!


最後のターゲットであろうチャンプルの額を撃ち抜いた瞬間、展開されていた電脳世界が消失しシュミレーター室はただの部屋に戻った。



(あっ……終わった。あ〜集中力使ったー…!)



肩ぐらいまで持ち上げていたスチェッキン・ピストルをゆっくりと下ろし、ふうとため息をつく。



《ご苦労だったな、イヴくん。》

「!」



突然スピーカーから音声が飛んできたもので驚くイヴだったが、すぐに背筋を伸ばして貴船総監の言葉に耳を傾ける。



《早速、今の試験の結果だが…。》


(う…どうだろ、ミスは無かったと思うけど、)

「……はいっ」




ごくりと喉をならし、試験の合否を待つイヴ。







《おめでとう、君は今日からネットセイバーだ!》




(………や、)



「っやったあああああああー!!!やった、やったやったぁーっ!!」


《うおおおーっおめでとーイヴちゃん!》

《良かったわね、イヴちゃん!》



ぴょんぴょんと嬉しそうにその場ではね回るイヴに、モニター室から熱斗や真辺の祝福の言葉が贈られる。



「うん、ほんっっとに良かったぁ!っていうか、っはー、ほんとに良かったぁ…!!」

《ではイヴくん、いったんあの部屋に戻ろうか。我々も向かうよ》


「は、はいっ!!」



そしてイヴはるんるんとした足取りで、銃を上着の黒いジャケットにしまいこんでシュミレーター室を出た。




 



「…では、今をもってイヴくんを正式なネットセイバーとすることになった。イヴくん、君のその特殊な能力はネット警察にとってかなり優位性に長けている。これからよろしく頼んだよ」

「はい、こちらこそお願いします!」



そしてイヴは、持ちナビの居ない炎山から貸してもらっているPETにネットセイバーの証明データをインストールしてもらった。



「わー、嬉しいなあ…!」

(今日から私…ネットセイバーになるんだ…!なんだか、胸がどきどきする。嬉しい!)


「これからよろしくな、イヴちゃん!」

「うん!熱斗もロックマンも、これから一緒にがんばろうね!」

<そうだね、僕もイヴちゃんが仲間になってくれて嬉しいよ。がんばろう!>



熱斗に言葉を返したあと、ライカの方にも体を向けて笑顔で言うイヴ。



「ライカとサーチマンもよろしくね!って言ってもサーチマンとは喋ったことないけど!」

「だ、そうだ。何か言ってやれサーチマン」

<…よろしく頼む。>


(わー予想以上にかっこいい声だ…!)

「うん、一緒にがんばろー!」



そして再度、真辺が今回のミッションについて説明を始める。



「じゃあ、もう一度確認するわね。今回のミッションは、熱斗くんやイヴちゃんが遭った電車事故の原因であるダークチップ…その出所であるダークチップ製造工場を突き止めて、叩いて欲しいの。
しかも今回のダークチップは、普通のチップに偽装していたことで世間により広まってしまったの。一刻も早くその工場を叩く必要があるわ。お願いね!」



「「「はい!!」」」















 
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