ミステリアスパニック!

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「いやーまさかイヴちゃんもネット警察と関わりがあったなんて俺びっくりだよぉ」




ネット警察にて。

貴船さんや真辺さんや光博士を待っている間、私は熱斗やライカと世間話をすることにした。



「うん、実は私アメロッパじゃなくてこことは違う世界から来たの。それで一応ネット警察に保護されてる身っていうか」

「へー?良く分かんないけどイヴちゃんは面白いなぁ」

「もう熱斗!うそじゃないよほんとなんだよ!!」




わ、私がせっかく勇気を出して真実を告白したのに…!熱斗のばか!




「話は変わるが、イヴ。お前はどうして現実世界と電脳世界を行き来出来るんだ」




身長差的に必然だけどライカに見下ろされて質問される。



「うーん、私も分かんない。こうやって目を閉じて、プラグインしたいって念じたらね、次に目を開けた時は電脳世界に居るの」

「……信じられん話だな」


「でも良いよなーイヴちゃん。俺だって電脳世界に入って、ロックマンに触ってみたいよ」

「えへへー」


「だがイヴ。そんな超自然的な力を持っていれば、いずれ色々な組織から狙われるだろう。恐らく俺の所属しているシャーロ軍も、お前の存在を知れば全軍力を投じてでもお前の力を欲しがる…。」

「私の力って、そんなに貴重なもんなの?」

「ああ。そしてイヴ、お前自身が危険に晒される可能性だって、」



そうライカが言いかけた時。
部屋の横開きのスライド式ドアが開き、貴船総監と真辺さんが入ってきた。




「そんな彼女を守るために、私達がいるのよ。」



「まっ、真辺さーん!」


私はピンク色の膝丈までのスーツを着た真辺さんを見るなり、たたたっと駆け寄って笑顔で見上げる。


「こ、こんにちはっ。あの、昨日はいろいろありがとうございました…生活用品とか、」

「ふふ、こんにちはイヴちゃん。あらいいのよあれくらい。元気そうで良かったわあ」



真辺さんは私の黒髪を指で梳きながら笑った。うん、やっぱり真辺さんはなんだか好きだ。人間なのに、凄く安心する…どうしてだろう。


いっぽう貴船総監がライカに向かってこう言った。



「シャーロからはるばるよく来てくれたね、ライカ君」

「はい。現刻を以て、シャーロ軍からネット警察へと帰属いたします」


そう言ってライカは白い手袋に包まれた右手でびしっと敬礼した。それを見ると、ああやっぱり軍人さんなんだなって思って。
ちょっと、かっこいいなー。なーんて。




「ところで今回のダークチップの件だが。真辺くん!」


「はい。熱斗くんとイヴちゃんの乗っていた電車の車掌ナビには、このダークリカバリーというダークチップが使われていたの。電車会社側は、これをダークチップと知らなくて使用したんですって。
熱斗くん、ライカくん。あなた達の今回の任務は、その諸悪の根源であるダークチップ工場を叩くことよ。お願い出来るわね?」

「「はい!」」



(……………ん?)


「ねぇねぇ、私のミッションは?」



もどかしそうに尋ねると、真辺さんは困ったように笑いながら私の頭を撫でた。


「危ないから、イヴちゃんは待機しておきましょうね。それにイヴちゃんはネットセイバーじゃないでしょう?」


な、なんですと!私はてっきり自分にも任務が与えられるものだと思っていたから、目を見開いて驚いてしまった。慌てて言い返す。



「私だって、ロックマンやサーチマンに劣らないくらいの腕はあるもん!足だって速いし、なにより現実世界と電脳世界を行き来できるこの力は絶対役に立つと思うの!」

「でもねえ…」

「あっちの世界ではイレギュラーハンターやってたんだもん…私だって、戦えるもん!」



そう主張する私に、さらに困り顔の真辺さん。本当に戦闘慣れしてるんだってばー!
何だか信じてもらえてないみたいでショックを受ける。



むすーっと私がふくれていた、その時だった。



部屋のドアが開いて、飛び込むように部屋に入ってきた人がいた。




「イヴっ!」

「あ、えんざーん!!」




そう、ぜーはーと息を切らしながらやって来たのは炎山だった。あれ、でも今ってお仕事の時間のはずなのに…どうしてネット警察に来たんだろう。お仕事が早めに終わったとか?


「ねぇ炎山、どうしてここに?」


小首をかしげて尋ねる私に、炎山は肩を上下させながら答えた。


「さっき、お前が暴走した電車に乗ってたって連絡が入ってっ…」


そう言って、自分の赤いPETのメール画面を開く炎山。相当走ってきたんだね、すごい息あがってる。
私はそのメールを声に出して読み上げた。




「ふむふむーなになに?イヴちゃんが暴走した電車に乗ってます。至急イヴちゃんと連絡を取った方が良いと思います。…ロックマンより?」

「おいおいロックマンー、俺の知らない間にそんなナイスなメール送ってたのかぁ」

<いや、だって一応女の子だし…もし身に危険があったらまずいし>



「それなのにお前といったら…っ、PETに何度メールしても何度電話かけても全く返信せずに…!!」

「え?」

(マジですか)


ジャケットの中から私の連絡用のPETを出して画面を見る。うわあ、本当にメールも着信も10件以上ある。これはひどい。……や、やっちゃったー!
私は冷や汗をかきながら、ぱんっと手を合わせて炎山に謝ることにした。



「ごっごめんねー炎山!」

「…ごめんで済むかこの馬鹿っ!!」



ばこん!!(殴音)



「いったぁーいっ!!なにするの炎山!」

「馬鹿、これじゃあお前にPETをやった意味が無いだろ!!少しは反省しろ!」

「だからごめんって言ったじゃん!」

「謝れって言ってるんじゃない、反省しろと言っているんだ!」




ギャーギャーと騒がしい私たちを見かねてか、深くため息をついて言ったのはライカだった。



「イヴ、喧嘩話なら後でやれ。ミッションに支障をきたす」

「………うっ、ごめん…なさい…」



うう、今の結構ぐっさり来た…。でも確かに今のは私が悪かったね。
しょぼんとしていた私に追い打ちをかけるように、熱斗の冷やかしが飛んできた。



「イヴちゃんと炎山って仲良いんだなあ」


「「よくないっ!!」」


「ほら、今ハモった!おもしれー!!」

<ね、熱斗くん笑っちゃダメだよ…。>



「ううう…熱斗のバカー!」

(………って怒ってる場合じゃなーい!)



結局私はミッションに参加させてもらえるのだろうか。個人的にはすごく参加したいけど、大人達の表情は曇りがちだ。これはダメっぽいかもしれない。

とりあえずもう一度聞こうとした矢先にライカが言葉を発した。





「では総監殿、こうしませんか。一度イヴには特別模擬ミッション…試験を受けてもらい、それで総監殿が認めたならば特別に彼女をネットセイバーにするということで。」


(えっ。ライカ、私のために助言してくれた…?)


「ふむ、良いアイデアだなライカくん。そうと決まれば早速その試験の準備に取りかかろう。
イヴくん、1時間後にまたこの場所に来てくれ。」


「!は、はいっ!ありがとうございます!」





そして部屋を出ていく貴船総監。真辺さんも一緒に出て行ってしまったのでちょっと寂しい。


いやあ、これは凄いチャンスをもらえたものだ。……というか、ライカに感謝しなくっちゃ!ありがとう、そしてありがとう!!


「へぇ、じゃあその試験に受かったらイヴちゃんもネットセイバーになれるのかぁ。がんばれイヴちゃん!」

「うん、ありがとう熱斗!それから、ライカもありがとねっ」

「………フン。お前があそこで諦めるようにも見えなかったからな」





やっぱり、ライカと炎山は似てるね。受け答えとか大人びてるとことかがソックリ。それがなんだか妙に面白かった。
ふと、隣の炎山からじとーっとした冷たい視線を感じて横を向く。






「おいイヴ、そんな危険なこと俺が許さないぞ。お前はただでさえ危なっかしいくせに、ネットセイバーになるだと?俺は認めないからな」

「ぶーぶー炎山のケチケチどケチ!なによ、試験を受けるかどうかなんて私の勝手でしょ!」


「そんなお前を養ってやっているこっちの身にもなれ!今以上に危険なことに首を突っ込むことになるんだぞ?名前も広まるし、お前のその特殊な能力に気づく奴も増えてしまう。そうなるとお前が狙われて、それで…」

「本当に危なくなったら炎山に助けてもらうもーん」

「甘えるな馬鹿、これはお遊びじゃないんだ」

「遊び半分で言ってるんじゃないよ、本気で戦うつもりだよ!イレギュラーハンターやってたもん、戦いには慣れてるんだから!」


「ああ、そうか。そうかよ」

「そうだもん!」


「……もう知らん。勝手にしろ!」




と言いながら、仕事に戻ると言い捨てて部屋を出て行こうとする炎山。





(あ、やっぱり仕事抜けてきたんだ…。……悪いこと、したなあ)






炎山がすごく仕事のことを大事にしてるのは何となく分かっていた。だから、これは謝らなくちゃいけないと思った。





「炎山っ!」







出て行きかけた炎山を間一髪で呼び止めた私は一歩歩み寄り、しゃんと姿勢を正して口を開いた。






「あ、あの………ごめんね。お仕事、中断させちゃって」

「………そう思うなら、俺に心配させるようなことはするな」



今の、遠回しにネットセイバーにはなるなって言いたかったのかな。




「ごめんね。でも、引き下がる気はないの」

「…強情なやつだ」

「ごめん。…けど炎山が心配してくれて、嬉しかった。だから、ごめんなさいだけど、ありがとうっていうか…ごめんなさいっていうか…。」




「……勝手にすればいいと言っただろう」


「へっ?」

「何かあったらすぐに俺のPETに電話しろ、必ずだ。どこかの誰かとは違って、連絡には応じるからな」

「じゃ、じゃあ炎山、許してくれ…」



「ミッションが終わったら必ず連絡を入れろ、分かったな」




その横顔は、どこかくすぐったくて。
私はなんだかとっても嬉しかった。




「……うんっ!」
 




笑顔で頷いて、出て行く炎山の後ろ姿を見送った。
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