ミステリアスパニック!

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翌日の午前8時。



炎山はすでに身支度を整えてイヴの部屋のドアをノックしたが、反応が皆無だった為仕方無く部屋の中に足を進める。

部屋の奥の方に配置されているベッドで、情報端末を抱えながら幸せそうに眠るイヴを発見した。




「…幸せそうな顔だな。おい、起きろ。」

「…………ぐぅ」

「イヴ、朝だぞ。」




ゆさゆさと掛け布団の上からイヴの体を揺するが、少し唸っただけで未だに夢の中のようだ。
息をすうっと吸って、少し大きな声で叫んでみる。



「起・き・ろ!」

「…んんー………………えん、ざん……?」




長いまつげにふちどられた綺麗な青い目が半分ほど開かれ、そしてまた閉じられようとするのを炎山は必死に止めようとした。




「おいっ、二度寝するな!時間が押してるんだ、俺を遅刻させる気か!」


「う〜ん…いってらっしゃ〜い……」


「ほーう。その態度だと、今日のぶんの金はいらないみたいだな?」




がばっ!!




「お、おはようございましたっ!!」


「よし。今から5分で身支度を済ませろ。それから金を与える」

「いえっさー!」



ベッドから降りて、顔を洗うため洗面所へ走って向かうイヴ。



「……フン、手間のかかるヤツだ」

<全くですね。>
















そして、かなり急いだのだろう、本当に5分以内に身支度を済ませたイヴ。
玄関にて金銭の受け渡しがなされる。



「じゃあ、これは今日の分の3000ゼニーだ。くれぐれも無駄遣いするなよ」



自分のPETから、イヴのPETに3000ゼニーぶんのキャッシュを送る炎山。これで、イヴのPETには3000ゼニーのお金が入っている事になる。




「うん、ありがとー!」


「それから、リビングのテーブルの上にお前の分の朝食がある。食べ終わったら、ちゃんと皿洗いしておく事。良いな?」

「はーい」


「あと、これはすごく重要な事だが、むやみに電脳世界をうろつかない事。また騒ぎになったら今度こそ面倒見きれんからな」

「うん、分かったー」



「良し。じゃあ、俺は会社へ行くからな。」

「はーい、いってらっしゃーい!」



イヴに笑顔で言われ、不思議な気分になる炎山。”いってらっしゃい”なんて、長いあいだ一人暮らしをしている彼には馴染みの無い言葉だったのだ。



(いってらっしゃい、……か。)



いってきます、と小さく返し、ドアをばたんと閉めた。
























「…とりあえず、朝ご飯食べよ」



いそいそと朝ご飯をかっこみ、さっさと皿洗いを済ませて歯磨きをして。
腕組みをしてうーんと考え込むイヴ。



「さーて、と。今日は何をしよう…」




ちらっと壁時計を見ると、朝の8時30分。





(そういえば昨日の夜、ファミリーレストランに行く道に商店街みたいなのを通ったっけ。)





炎山からも、必要な物は買っておけと言われているという事で、イヴは生活用品やらを買い込むためにその商店街に向かう事にした。




(ぜったい人間いっぱいいるだろうなあ…。……でも、必要なものを買いにいくためなら仕方ないよね。がまんがまん)





玄関にて自分の靴をせっせと履き、こぶしをつくった右腕を上へ振り上げて、元気に言い放つ。





「よーし、一日がんばってこー!」


 
 
  


 
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