ミステリアスパニック!
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「はぁっ、はぁっ………!」
ドン!
「いってーな、気ィつけろガキ!!」
「っ、はっ、………!!」
「…けっ、シカトかよ。」
なに。
いったい、ここはどこなの?
エックスは?ゼロは?アクセルは?エイリアは?シグナスさんは?
(……どこ、ここ…?)
見渡す限り、人間しか居ない。レプリロイドが見あたらない。車がびゅんびゅん行き交う都会らしき町だけど、私はこんなところ来たこと無い。
(いやだ、人間がたくさんいる…)
だって人間は…5年前、私をハンターベースの前に捨てた。
なのに、こんなにたくさんの人間がいるところに放り込まれるなんて冗談じゃない。自分以外の人間が皆無だったハンターベースと違い、今私がいるここには人間しか居ない。
(いやだ、いやだ。)
もう一度キョロキョロ辺りを見回してみるけど、ほんとうにレプリロイドなんて一体も居ない。
ここは、どこの町なの。シティアーベルじゃないの。
(私は今、どこに居るの?)
溢れてくる不安を紛らわせるように、私は再び駆けだした。
このまま走っていったら、もしかしたらそのうちハンターベースが見えるかもしれないなんて良く分からない薄い期待を持って。
ただ、闇雲に走り続けた。
でも、どれだけ走ってもハンターベースはおろかレプリロイド一体さえ見かける事ができなくて。
疲れ果てた足と心を休めるために、その辺にあった公園のベンチに腰を下ろした。
「………はあ、はあ…」
ベンチに座って、髪の毛をくしゃりとかき混ぜて。
絞り出すような声で呟いた。
「……………どうしよう。」
私が今いるこの世界は。何かが、おかしい。
(待って。もういっかい最初から考えてみよう)
私はハンターベース内の自分の部屋に居たはず。部屋の外では、私が着替え終わるのを待ってくれているアクセルが居た。で、何か気持ち悪くなって倒れて、気がついたら何も知らないところに来ていた。
(…もしかして、シグマの一味に拉致されたとか?)
…ううん、それは有り得ない。
第一あの時の私の部屋は密室だったし、部屋のすぐ外にはアクセルが居たんだから。加えて私の部屋と外の世界をつなぐのはドアだけ。窓一つない部屋だもんね。
それにシグマの一味にさらわれたとしても、私をあの茂みの中に放置していくなんておろかなことはしないはず。
ここまで考えた時、私の脳裏に一つの可能性が浮かび上がった。
「パラレル、ワールド……?」
つまり異世界へ来ちゃった、みたいな。もしくは知らない星とか。
………ははは………ダメだ、笑えない。
「……ど、どうしよう……」
ほんと、どーなってんの。
誰か私に教えてください。
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「ブルース、このデータをSUNY社に届けてくれ。秋原エリアを通っていけばすぐに着くだろう」
<了解しました>
そして炎山のPETから同じく彼のパソコンへプラグインされ、頼まれたデータを届けに行ったブルース。
見晴らしの良い立地で無駄にだだっ広い副社長室に、炎山は一人になる。
チラリと時計を見るとすでに昼休憩の時間に入っていたので、小学六年生にはおおよそ勿体ない豪勢な椅子に深く腰をかけた。
これまた豪勢なデスクに頬杖をつき、ぽつりと呟く。
「…それにしても、朝の少女……一体何がしたくてあんな植え込みの茂みの中に…?」
そう、この日の午前中、炎山は朝見つけた女の子の事をずっと考えていたのだ。
あの少女の異常なまでに動揺していた様子からして、家出でもしてきたのかという考えが浮かんだ。あくまで予想の範囲ではあるが。
それに、自分と同じあの青い目が何故か脳裏から焼き付いて離れなかった。
「………まあ、そのうち忘れるか」
(考えたって分からないことをいつまでも追究するのは、バカのやることだ)
諦めたように小さく言い捨てて。
立ち上がり、全面ガラスの窓越しに見える都会の高層ビルを眺めた。
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いっぽうイヴはというと。
公園のベンチでひたすらぐったりした後、少し体力が回復したので公園内をふらふらと歩いていた。すると電柱のところに、小さい箱のような機械が取り付けてられているのを発見したのだった。しかも、穴のようなものが開いている。
その不思議な箱をじいっと見つめ、イヴは首をかしげた。
「なんだろ、これ……。コードでも差し込むのかな?」
「それ、プラグインする穴だよ。」
突然後ろから言葉を飛んできたので、びっくりして振り向く。
そこには青いバンダナを巻いた茶髪の、元気そうな男の子が立っていた。
(…げ、人間だ。)
少し動揺したが、男の子のおおらかそうな雰囲気のおかげかそこまで嫌悪感は無かった。
「……ぷらぐ、いん?」
「うん。こうやって、自分のPETに居るナビを電脳世界に送り込むんだ」
「?」
(でんのうせかい?)
「まあ、見ててよ!」
男の子は自分の青いPETを取り出し、その穴に向けて言い放った。
「プラグイン! ロックマン.EXE.トランスミッション!」
するとPETの先から赤い細い光が放たれ、その電柱についていた小さい箱のような機械の穴にキュインと音を立てて入っていった。
「ほら、こんな具合にさ!」
「……す、すごい…!」
初めて目にしたプラグインに、純粋に感動するイヴ。男の子は自慢げにそーだろーと笑っていて、人なつこそうな言動と相まってイヴの心の壁を少しずつそいでいった。
「君、ナビ持ってないの?」
「うん。…”なび”って何?」
と、真顔で尋ねてくるイヴに対し、激しく驚く男の子……いや、光熱斗。
「ナビ知らないのぉ!?」
「? う、ん。」
「ほええ〜………。…あ、と、とりあえずプラグアウトしようっと」
そして今度は電柱の方から熱斗のPETへと、赤く細い光が入っていく。
(この穴が、”でんのうせかい”の入口なのかあ…)
興味津々にプラグイン用の穴をまじまじと見つめるイヴ。
そんなイヴの隣で、熱斗はPETの中に戻ってきたロックマンをのぞきこみ、驚きまじりの声で言った。
「なあロックマン、この女の子ナビって何か知らないんだって!」
<ね、熱斗くん! 本人の前でそんな言い方しちゃダメでしょ!>
「だって、今の時代にありえないだろー」
<もう!初対面なんだし、そんな失礼な事言わないの!>
「ええ〜でもさあ…」
と、熱斗がしぶった時だった。
<…あれ? 熱斗くん、女の子…居なくなってるよ?>
「へ?ロックマンてば何言って…………………え?あ、あれ?どっか行っちゃった!!いつの間に!?」
<なんだか不思議な子だったね…。さ、散歩はこれくらいにして、早くウチに帰って宿題のつづきやろうね>
「ちぇーっ」
そして熱斗は色々と複雑な感情を抱きつつも、ローラースケートを滑らせた。