ミステリアスパニック!

□少女、消える
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「イヴ、こっちだよー!」




薄暗い格納庫の中をキョロキョロしていると、アクセルの声が聞こえたのでその方向へ駆けていく。

しかし、そこにはライドチェイサーが3台しか無かった。




「あ、あれ?私のライドチェイサーは!?」



イヴが疑問符を頭の上に浮かべて、たまたま横に居たゼロに問い詰めると、怪訝な顔でさらっと返された。



「修理中だそうだ」

「えぇえー!?」


「仕方ないじゃん、修理中なんだから。ほら、早く出動しないとまたエイリアに怒られちゃうよ!」



と、アクセルにせかされ、しぶしぶ頷くイヴ。
しかしあまりにもイヴがしょんぼりしていたので、自分のライドチェイサーの後方をぽんと叩いて声をかけるアクセル。


「イヴ、ボクのライドチェイサーの後ろに乗りなよ!」

「えっ、でもこれって一人乗りじゃ…」

「イヴは細いから大丈夫だよ!」

「そういう問題じゃないよーな…。」



「…細いからじゃなくて、チビだからだろ」


「なっ!ゼロの馬鹿、もう口きいてやんない!!」



べーっと舌を出してから、イヴはぴょんっとアクセルのライドチェイサーに飛び乗る。もともと身軽なのに加え、自分で開発したアーマーのおかげで反重力性も高まっているのだ。


「イヴ、ちゃんとボクの体に掴まっててね」

「うん!」


ぎゅう。アクセルの腰にまわる細い腕。
エックスはそれを見て、少し動きがフリーズする。



「…………。」

「どうしたのエックス?ボクが羨ましい?」


ニヤニヤしながら言ってくるアクセルに対し、大きな声で一蹴する。



「バカなこと言うな!いいから、早く発進しよう」

「そうだねぇー」

(ホントは羨ましいくせに。)





「…それじゃ、行くぞ!」


という、エックスの声と共に格納庫のハッチが開き、3台のライドチェイサーがエンジン音をあげて勢い良く発進した。

































そのミッションの帰り道。




時間はちょうど夕方で、オレンジ色の夕日がハイウェイを走る3台のライドチェイサーを照らしていた。


アクセルの後ろのイヴはというと、ぐっすりと眠りこけている。


「イヴ、寝ちゃったんだな」




幸せそうに熟睡しているイヴを見てくすりと笑いながら言うエックス。



「今日のイレギュラーの数は多かったからな…疲れるのも無理はないだろ、ましてやコイツは人間なんだぜ」

「確かにな」

「ボクも疲れちゃったよ。あ〜、早く帰りたいな!」

「って言っても、すぐそこじゃないか」



愚痴るアクセルに、数百メートルほど先に見えるハンターベースの建物を顎で示すエックス。



「そうだけどさ…。ほら、格納庫から部屋に帰るあの時間がしんどくない?一瞬でワープできる装置とかないのかな?」


「そこで寝てる奴にでも頼んでみろよ」

「あ、そっか。イヴ機械いじり好きだもんね。いいこと教えてくれてサンキューゼロ!」

「けどワープ装置って、機械いじりとはレベルが違いすぎないか?」



苦笑いでエックスが言うと、アクセルはすかさず反論する。



「けど、このアーマーだってイヴが自分で造ったんでしょ?ワープ装置くらい楽勝に決まってるよ、きっとものの数十分くらいで…」


「それはないな」

「ああ、ない。」



ゼロ、エックスの両人に即却下され、頬をぷーっと膨らませるアクセルだった。



「ちぇっ。なんだい、二人して!」


「そのワープ装置はどうか知らんが、さっさと帰りたいのには同感だ」


「2人とも、もうハンターベースは目の前だぞ。…エイリア、聞こえる?こちらエックス。まもなくハンターベースに帰投します」



ライドチェイサーの画面に、通信で繋がったオペレーターに呼びかけるエックス。



<ええ聞こえるわ。お帰りなさい4人とも>


「ああ、ただいま。ハッチ開いておいてくれるかな?」


<了解したわ。>



通信は終了し、それと同タイミングで格納庫のハッチが開く。

やがて三台のライドチェイサーが減速しつつ格納庫の中へと入っていく。



彼らは無事、ハンターベースへと帰って来たのだった。


 



「ふぅ……。」



ライドチェイサーから降りたエックスは、疲れのせいか大きくため息をついた。



「ため息ついたら幸せが逃げるんだよー」

「それ、イヴにも同じ事言われた。」



アクセルにからかわれ、エックスは苦笑する。




「というか、コイツどうするんだ?」



呆れた様子のゼロが指差すその先には、未だにアクセルに後ろから抱きついたまま寝むりこけているイヴ。
おかげでアクセルはライドチェイサーから下手に降りられなくて困っているようだった。



「イヴ、起きるんだ。アクセルが困ってるじゃないか」



エックスがゆさゆさとイヴの小さな体を揺するが、起きる気配は一向に無い。だいぶ深い眠りのようだ。ゼロも加勢する…が。



「おいチビ、良い加減起きろ」

「……………ぐぅ…。」



「…ダメだな、こりゃ。」

「えー、ボク降りられないじゃん。エックス、イヴ取ってよ!」


「そんなイヴを虫みたいに扱うのはやめてくれ…」



などと言いつつ、エックスはイヴの細い体を優しく抱き上げた。



「よし、やっと降りられたー!」



たんっと格納庫の床に降り立って、うーんと背伸びをするアクセル。




「じゃ、今日はもう俺たちも自分の部屋に戻ろうか。イヴは、」

「イヴはボクが部屋まで送り届けるよ!」



「(くっ……!)あ、ああ。じゃあアクセル、イヴをお願いな」



自分の腕の中ですやすや眠っていたイヴの体をアクセルに渡し、彼女の体を抱えながらるんるんと格納庫を出て行くアクセルを、ため息をつきながら見送るエックス。


そんなエックスを見てゼロが呆れたような表情で尋ねた。




「なんだお前、まさかあのチビに惚れてる言うんじゃないだろうな?」

「いや、なんというか、……………。」


(……おいおい冗談だろ)


「……ゼロ。その事について少し話があるから、後で君の部屋に行ってもいいか…?」


「あ、ああ。構わねえけどよ」



そしてふらふらした足取りで格納庫を後にしたエックスの後ろ姿を見つめながら、ゼロは首を傾げていた。




(なんだエックスの野郎。あんなチビが気になるなんて…病気か?)








   
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