DDD

□fall asleep
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甘々すぎて別人化してますorz


『fall asleep』



夜中に悪夢で目が覚めた。


「っ…」

目覚めていきなり勢いよく体を起こしたせいで、軽く目眩がする。
手の甲で瞼を擦り、暗闇で光るデジタルの時計を見やると、午前三時を回った頃。
ちなみに、寝たのはつい二時間程前。早起きにもほどがある。
…悪夢は忘れるに限る、と思ってから、忘れるべき夢の内容が思い出せない事に気づく。
俺は思わず舌打ちをして、跳ね起きた体制から、再びドサッと横になる。
そのまま眠ってしまいたかったけれど、喉がカラカラに乾いているし、心臓の音がうるさい。
それがどうしても無視できずに、諦めて布団を抜け出す。

「ふわぁ……水…」

欠伸をしながら冷蔵庫の中身を漁り、買い置きのペットボトルを取り出して蓋を開けて
一気に飲み干す。そうやって喉を潤した所でようやくほっとため息をつく。

「はぁ…」

それにしても嫌な夢だった。いや、さっぱり覚えてないんだけどさ。後味がすごく悪い。
なんとなく落ち着かなくて、部屋をうろうろした挙げ句にキリスの寝床にたどり着く。
いつの間に帰って来たのかは知らないが、既に熟睡している様子で動かない。
規則正しく聞こえる安らかな呼吸の音。くそ、気持ち良さそうに寝やがって。
理不尽に妬ましく思いながら、起こさないように静かにベッドの脇に腰を下ろし、
そのまま特に意味もなくぼんやりと、眠るキリスの横顔を観察する。
身体を少し折り曲げるような体制で、壁側に背を向け、こちら側を向いている。
額にかかる前髪のせいか、寝顔なせいか、幼く見えるのが面白い。
…いや、20歳前の男に幼いと言うのもおかしな話なのだけれども。

「…さて」

特に収穫の無い観察に飽き、落ち着いてきた所で、眠気は一向に訪れそうにない。
どうしたものか。

「……キリス」

ちょっとくらい触っても起きないかな、と思いつつ、身体をひねって右手を伸ばす。
と。

「え? うわ…っ、………あれ?」
「……アリカ…何してんだ?」

指先が触れる寸前で無造作に手首を掴まれ、引っ張られてバランスを崩す。
そのまま腕で腰をガシッと抱えられ、力業でベッドに仰向けに転がされる。
…俺にまだ左腕があったら、壁に手をついたりして抵抗出来たのかもしれない。
吃驚して見上げた頭上には、ついさっきまで見下ろしていたキリスの、呆れた顔。
もし寝込みを誰かに襲撃されてもこの反応なら大丈夫そうだなぁ、と感心する。
もっとも、俺が観察していた間に引き金でも引いていたら終わりだけど。

「起きてたのか」
「気配で起きたんだよ」
「気配って」
「お前とは違うからな」

失礼な。と思うが、悲しいかな、俺が鈍いのは紛れもない事実である。

「っていうか…お前こそ寝てなかったのか?」
「寝てたけど」
「だよな? なんで俺の所にいるんだ?」

えーと…、この場合なんと説明するのが正しいんだろう? 言い澱み、言葉を探す。
悪夢(多分)を見て目が冴えた、っていうのはなんとなく格好がつかない。
…もっとこう、うまい具合に言えないものかな。キリスの所に来た理由。
っていうか理由なんてあったっけ? そもそも。

「眠れないから」
「へぇ?」

あ、マズイ、なんか下手な誘い文句みたいに…ってちょ、ま、

「っ…キリ、」

クスクス笑いながら、キリスが、ぎゅう、と俺の身体に両腕を回す。
ちょ、キリス、体重かかってる、苦しい、苦しいってば!

「一緒に寝たかったのか?」
「…そういうんじゃないよ」
「怖い夢でも見た?」
「……覚えてない」
「可愛い所あるよな、アリカって」
「可愛い言うな」
「うん、可愛いよお前」

不貞腐れる俺にそう言いつつ、コツン、と額と額をくっつけるキリス。
いつもは三つ編みにしているキリスの長い横髪がパラパラと落ちてきて、
俺の顔を撫でるのがくすぐったくてたまらない。けれど嫌な気はしない。全然。

「…恥ずかしい奴」
「どっちが」

苦笑しながら、唇を合わせる。最初は触れるだけで、それから段々深く、甘く。
さっきまでなんともなかったお互いの鼓動が、まるで競い合うように早くなる。

実はこれも夢の一部だったりして…

そう思いながらも、俺はそのまま加速する行為に身を委ねたのだった。






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夢から夢へと渡り歩くような。

2009/1/15
 

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