麻帆良な日常
□ACT.2.5
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――飛鳥SIDE――
剣道着に着替え、辻や他の男子部員と軽い打ち合いをする。部長なだけあって、辻は見込みがいいけど、他は全然駄目だ。弱すぎ。
「今日はこれまで!」
「「「「ありがとうございましたー!!」」」」
昼前に部活は終了し、解散となる。だけどオレはまだ帰れない、刹那と神鳴流の稽古があるからだ。
「おし、来いよ刹那」
十分に間合いを取ってオレは言った。刹那が頷いた、と思えばすぐ目の前に現れる。
――瞬動か。
脳天めがけて突き出してくる竹刀を首だけ倒して避け、左手で竹刀を払う。空いた右手で刹那に竹刀を向ければ、刹那は瞬動で距離を取り体制を整える。
――斬空閃!
威力を最小まで抑えた斬撃を飛ばす。刹那が同じ技で相殺するのを横目に、オレは瞬動で後ろに回った。
「しまっ……」
「斬岩剣!」
ぱしん、と音を立てて刹那の手から竹刀が離れる。更に投げ技を繋げ、床に叩きつけたところで竹刀を首に当てて逃げられないようにする。
「くっ……参りました」
「おう。精進しろよ」
刹那の首から竹刀を退け、手を掴んで立ち上がらせる。
ふと、刹那が悔しそうな顔をしてるのが見えた。
「んだよ、悔しそうだな刹那」
「はい」
「ふーん」
トントンと竹刀を肩に当て、そして……。
「生意気」
「あいたっ」
竹刀の柄で軽く頭を叩いてやった。
「な、何するんですかっ」
「うっせ、兄弟子に生意気なこと言うのが悪い。妹弟子に負けるほど弱くねっつの」
「それはそうかもしれませんが……」
如何にも不服そうな刹那。何だよ、文句でもあるのか?
「お嬢様をお守りするために強くなりたいのです。しかし、何度戦っても飛鳥さんには勝てないので……」
「自分は強くなっていない、ってか?」
小さく頷く刹那。ったく、心配性だな。
オレは刹那の頭に手を置き、少々乱暴に撫で始める。
「な、何を……っ」
「安心しろよ、お前は強くなってる」
「え……」
「お前は強い、オレが保証する。……ま、まだまだオレには及ばないがな」
ニカッと笑って見せれば、刹那は不満げに、しかし嬉しそうに小さく笑った。