麻帆良な日常
□ACT.6
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――夕詠SIDE――
飛鳥のツッコミが辺りに響く。よかった、元気になったみたいだ。
昨日血を吐いた時はどうしようと思ったけど……。
――それにしても、どうして血を吐いたんだろう。
聞きたい、だけど、飛鳥は『何も言うな』って言っていた。
「おーい夕詠、行くぞー」
「あ……」
少し先で飛鳥が僕を呼ぶ。
その顔は、昔僕を暗がりから救ってくれた時と同じ、明るい笑顔で。
昨日のことを聞いたら、飛鳥はあの笑顔を僕に向けてくれるだろうか? もし、飛鳥に見捨てられたら……。
「何ぼーっとしてんだよ」
考え事をしていたら目の前に飛鳥の姿があった。
「ほら、行こうぜ」
そう言って飛鳥はまた笑う。
「……はい!」
決めたよ飛鳥。君が自分から言うまで、僕は何も聞かない。それで、僕を救ってくれた君に、少しでも恩を返せるなら。
――飛鳥SIDE――
やけに鹿の多い場所、奈良公園。ここまでアスナたちを追いかけて来たのはよかったが、班員がバラバラに動くため見失ってしまった。
仕方がないから近くの休憩所で団子を食べながら時間を潰すことにした。
「何だか外が騒がしい気がしませんか?」
「んあ?」
夕詠の言う通り、休憩所の外から叫び声が聞こえる気がする。まったく、他の客に迷惑だ。一言注意してやろうと外に顔を出して、急いで引っ込めた。
「どうしました?」
「あ、アスナだ……」
外にいたのはアスナだった。気づかれてないみたいだから一安心……。
「こんなトコで何してんのよ、あす……じゃなくてシロ」
「げっ!?」
気づかれてたみたいだ……。
「てゆーかアンタ、昨日逃げたでしょ、何で京都にいるのか白状しなさい!」
「そ、それはー……」
丁度その時、刹那が中に入ってきて、アスナの注意が逸れた。しめたっ!
先に勘定を済ませて置いてくれた夕詠にアイコンタクト。夕詠が頷いたのを見て、縮地法を使ってその場から立ち去った。